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読書感想文2020 part 3
「読書感想文2020」 part3は、5月〜7月の読書録です。
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旅猫リポート (有川 浩著、講談社文庫)
作品の紹介
30過ぎの独身男性、悟は、小学生のころに飼っていた「ハチ」という名の猫を忘れられず
にいる。 5年前、悟は、交通事故で瀕死の重傷を負った「ハチ」そっくりの猫を助ける。
悟は、その雄猫を「ナナ」と名付け、かわいがってきた。 しかし、「ナナ」を飼えなく
なり、小学校時代の親友、幸介に「ナナ」を引き取ってもらうべく、彼のもとを訪ねる。
幸介は「ナナ」を引き取る気でいたが、悟の提案で、幸介は新しい猫を妻と選ぶことになる。
悟は、次に、中学校時代の親友、吉峯に「ナナ」の引き取りを依頼する。 しかし、幸介の
飼い猫「チャトラン」と「ナナ」の相性がよくないと誤解し、「ナナ」を連れ帰る。
次に訪れたのは、高校と大学の友人、杉と千佳子夫妻。 悟は、ここでも、飼い犬のトラマル
との相性を理由に、「ナナ」とともに二人の家に帰る。
そして、悟と「ナナ」は、叔母の法子と札幌で暮らし始め、旅を終える、、、。
人間のことばを理解する「ナナ」の視点と悟の友人たちの視点を交互に繰り返す構成。
「ナナ」の幸せを願い、信じられる人間に「ナナ」を託そうとする悟の親心と、「ナナ」
と離れたくない心情のまだら模様の描写が絶妙。
物語後半で明かされる、悟が「ナナ」を飼えなくなった理由。 せつない話なんだけど、
とてつもなくあたたかいが全編にあふれている。 終盤は号泣必至。 エピローグまで最高。
世代をこえておススメの一作。 2018年映画化。 オススメ度:8.5
わたし、定時で帰ります。 (朱野 帰子著、新潮文庫)
作品の紹介
IT企業勤務の東山結衣、32歳。 入社以来10年、定時に帰る主義。
しかし、元カレの種田、同い年の三谷というワーカホリックが転職してきて、
定時退社にも有給休暇にも、風当りが強くなってきた。 しかし、結衣は
ポリシーを変える気もなかったし、交際1年の巧との結婚話を進めようと
していた。 そんな中、種田の前の勤め先の社長だった福永が結衣の会社
に転職してくる。 種田の9歳下の弟、柊は、結衣に「福永には気をつけろ」
と警告のメールを出す。 結衣たちのチームの課長になった福永は、顧客の
要望に「ノー」と言えないやさしさが原因で、元の会社の社員たちに過酷な
量の仕事を強いていた。 さらに、産休から復帰した結衣の先輩の賤ケ岳。
執行役員として入社した丸杉。 結衣のまわりにどんどんワーカホリックが
増殖していく、、、。
しかし、結衣は、一人ずつ同僚たちの目を覚ましていく。
そんな結衣の味方は種田だった。 やがて、丸杉が突然、退社。 事態は
好転するかに見えたが、今度は、婚約者、巧の会社とコンペになる、、、。
結衣は、覚悟を決めて、仕事に向き合う。 社長に直接交渉したり、福永を
休職させたり、会社に泊まり込んだり。 ついに、大きなプロジェクトを
成功に終わらせるが、過労で倒れる、、、。
期待以上の完成度。 共感度大。 世代を越えて働く人に読んでほしい作品。
読者の期待を裏切らないエンディングもナイス。
2019年ドラマ化。 オススメ度:8.4
うちの子が結婚しないので (垣谷 美雨著、新潮文庫)
作品の紹介
福田千賀子、57歳。 プログラマーとして働く派遣社員。 夫は大学の同級生。
一人娘の友美は28歳。 結婚の気配なし。 娘の将来が不安になった千賀子は、
子どもの代わりに見合いをする「親婚活」パーティーに参加する、、、。
しかし、第一回のパーティーは、身上書の交換まではしたものの、価値観の違う親、
外見重視の息子たちの前に、お見合いまでたどり着けなかった。 同時に娘の友美
も婚活パーティーに参加するも撃沈する。
気を取り直して、千賀子は、違う業者の親婚活パーティーに参加。 同じく別の
業者の婚活パーティーに臨んだ友美は連敗するが、千賀子の首尾は上々。
三人の男性とお見合いに進むが、友美が気に入らなかったり、気に入られなかったり。
やがて、友美は勉強し始めたイタリア語を生かし、仕事が充実し始める、、、。
親婚活を始めて一年。 友美は29歳になっていた。 8回目の親婚活で見つけた青年
と交際を続ける友美は、両親に結婚の意思を伝える、、、。
恋愛結婚も減ってるらしいし、見合い結婚、しかも、親婚活もたいへんなんだなあ
と、フィクションながらとても現実味のある話だと思った。
この小説は、千賀子と夫と友美が、自分たちの結婚観を修正し、完成させていく話
でもある。 結婚すべきか否か。 人それぞれなんだろうけど、難しいテーマ。
オススメ度:8.1
ラプラスの魔女 (東野 圭吾著、角川文庫)
作品の紹介
300km離れたふたつの温泉地で硫化水素による中毒死が続けて発生。 たまたま両方の
現場で事故原因の調査を依頼された大学教授の青江は、原因を特定できずにいた。
青江は、両方の現場で謎の娘、羽原円華と出会い、円華がある青年を探していることを
知る。 さらに、被害者が二人とも映画関係者であり、二人をつなぐ人物が映画監督の
甘粕才生であることを突き止める。 甘粕は娘が硫化水素で自殺を図り、妻を亡くし、
息子の謙人も植物状態となっていた。 そして、謙人を治療し、回復させたのが円華の
父で脳神経外科医の羽原全太朗だった、、、。
青江は、円華がふたつの現場で探していたのは謙人ではないかと推理する。 青江は
事件の捜査で訪れた刑事の中岡に、自分で調べたことと推理を話す。
中岡は、羽原全太朗を訪ねるが、羽原は中岡をはぐらかす。 羽原は、秘書の桐宮、
元警察官で円華のボディガード、武尾とともに、中岡の狙いを推理。 中岡の背後に
いる青江の存在を突き止め、桐宮が青江にアプローチする。 桐宮は、青江に事件から
手を引くように忠告するが、青江は耳を貸さない。
やがて、円華は、ドライアイスを使って事件現場を再現するが、青江は、その仕掛けを
見抜くことはできなかった、、、。 青江を尾行していた桐宮は、青江を羽原全太朗に
引き合わせる。 そして、羽原から謙人と円華の驚愕の秘密を知らされる、、、。
青江は、円華とともに謙人のもとに向かうが、、、、、、。
「探偵ガリレオ」みたいな感じ?と思って読み始めたら、予想をはるかに超えた超科学的
な作品だった。 いつもと違うミステリーを読みたい人におススメ。
作品特設サイトはこちら。
2018年映画化。 500ページ近い大作。 オススメ度:8.3
後妻業 (黒川 博行著、文春文庫)
作品の紹介
7年前妻に先立たれた91歳の元高校教師、耕造は、69歳の小夜子を後妻に迎える。
小夜子は、結婚相談所の経営者、柏木と共謀し、遺産目当てで高齢者との結婚を繰り返して
いた。 小夜子が薬を細工し、耕造は脳梗塞で亡くなるかにみえたが、持ち直す。
しかし、耕造の入院中に、小夜子と柏木は、耕造の金庫を鍵師に開けさせ、預金を引き出す。
結局、耕造は、小夜子の細工により、肺炎をごじらせ死亡。 小夜子と柏木が仕切った葬儀
は、費用を偽り、耕造の57歳の娘、尚子、53歳の朋美から200万を引き出す。
さらに、小夜子は、公正証書を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると、尚子と朋美に宣言する。
朋美は、高校の同級生で弁護士の守屋に相談。 小夜子が「後妻業」を生業にしていると直感
した守屋は、興信所の深町に小夜子の調査を依頼する。 深町の下請けで、元刑事の探偵、本多
が小夜子の過去の調査を開始。 そして、小夜子が、窃盗、私文書偽造、覚せい剤所持などの
前科を持ち、結婚 → 夫が不審死 → 遺産相続を何度も繰り返していることを突き止める。
守屋は、朋美とともに、小夜子と交渉し、5,000万円を尚子、朋美に支払うことに同意する。
本多は、柏木を脅し、3,000万円を手にするかに見えたが、小夜子の弟、博司に銃撃される。
足を撃たれたが、間一髪、逃げ、柏木のもとに向かう、、、。
前半は社会派ミステリー。後半はアクションシーンの連続。 リーダビリティーの高い、ある
意味エンターテインメント小説か。 映像が目に浮かぶ作品。
2016年、映画化。 2019年、ドラマ化。 オススメ度:8.2
三人屋 (原田 ひ香著、実業之日本社文庫)
作品の紹介
朝は三女の喫茶店、昼は次女の讃岐うどん屋、夜は長女のスナック。
朝、昼、夜でお店が変わる通称「三人屋」。
長女の夜月、36歳、次女のまひる、32歳、三女の朝日、23歳。 三人とも仲が悪い。
特に長女と次女の仲は最悪。
三姉妹がかかえる問題を、常連客の視線を通して、あぶりだしていくスタイル。
三姉妹の視点と常連客の視点の切り替え、バランスが絶妙。
まひるの離婚や夜月の失踪などの事件も織り交ぜながらストーリーは進んでいく。
オススメ度:8.2
よろこびの歌 (宮下 奈都著、実業之日本社文庫)
作品の紹介
著名なヴァイオリニストの娘、御木元 玲。 声楽を志し、音大附属高校を受験するが、
まさかの不合格。 新設の私立の女子高に入学する。 学校では、周りとの関係を断ち、
ひとり淡々と生きる玲。 しかし、高2の校内合唱コンクールで、クラスの指揮をする
ことに。 玲の指導についていけない、反発するクラスメイトも多く、合唱コンクール
は、散々なデキに終わる。 合唱コンクールに続いて行われた校内マラソン大会では、
運動が苦手な玲はダントツの最下位。 玲が最後の力を振り絞ってゴールに向かって
いるとき、クラスメイトが合唱コンクールの曲を歌い始める、、、。
これがきっかけでクラスになじみ始める玲。 友人もでき、音楽と向き合う姿勢も自然
に変わっていく。 そして、クラス担任の音楽教師の提案で、卒業生を送る会で、リベ
ンジを果たすべく、もう一度、合唱コンクールの曲を歌うことになる、、、。
七章建ての作品。 第一章が玲。 第二章から第六章まで玲と関わりを持ち始めるクラス
の仲間を次々に描いている。 そして最終章、再び玲の視点で物語を終える。
登場人物たちの三年後を描いた続編「終わらない歌」があると知り、こちらも読まねば、
と決意。 オススメ度:8.2
豆の上で眠る (湊 かなえ著、新潮文庫)
作品の紹介
小学校一年生の時、結衣子の二歳上の姉、万佑子が行方不明になる。
スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。
誘拐が疑われるが、捜査は進まなかった、、、。
しかし、二年後、万佑子が保護される。 万佑子が別人だという疑念がぬぐえない結衣子。
結衣子と同様、母方の祖母も万佑子に疑いを持つ。 ついに祖父の提案により、DNA検査を
行うが、万佑子は両親の娘であることが証明される、、、。
大学二年になった結衣子は、夏、実家に帰省。 万佑子の友人、遥に出会う、、、。
湊さんの作品特有のどんよりした薄曇りの雰囲気が全編を覆っている。
読者の好みが別れる作品。 個人的にはすっきりしない読後感だった。
オススメ度:7.8
孤狼の血 (柚月 裕子著、角川文庫)
作品の紹介
昭和63年、広島。 広島大卒業ながら、ノンキャリアの警察官の道を選んだ日岡秀一、
25歳。 表彰歴も多いが、ヤクザとの癒着を噂されるマル暴刑事、大上章吾、44歳。
日岡は所轄署の刑事となり、大上のもとで働くことになる。 やがて、地元の暴力団、
加古村組のフロント企業、呉原金融の社員、上早稲が失踪した事件の捜査を開始。
大上は、上早稲が加古村組の組員らに拉致されたことを調べ、逮捕に向かうが、一足
違いで逃げられる、、、。 続いて、大上が親しい尾谷組が、加古村組と抗争を始める。
大上は違法捜査をしてまで、加古村組を壊滅に追い込もうと動き、尾谷組を止めようと
する。 大上と日岡は、上早稲の遺体を発見、加古村組を追い込むが、大上の違法捜査
が密告され、自宅謹慎処分となる。 やがて、尾谷組の組員が、加古村組の上部組織、
五十子会の幹部を銃撃する、、、。 自宅謹慎中の大上は五十子会を訪れ、会長の五十子
と尾谷組との手打ちを話し合う。 しかし、五十子からの返事を聞く日、大上からの
連絡が途絶える、、、、、、。
骨太なハードボイルド小説。 ドライブ感あふれる、リーダビリティーの高い、劇場型
の作品。 ラストはせつないけれど、ハマる人は多いと思う。
数々の賞を受賞したのも、売れたのもわかる。 けど、個人的にはハードすぎる感。
特設サイトはこちら。
2016年「日本推理作家協会賞」受賞作品。
「直木賞」、「吉川栄治文学新人賞」候補作。「本の雑誌」2015年ベスト10:第2位。
2018年、映画化。 オススメ度:8.2
汚れた赤を恋と呼ぶんだ (河野 裕著、新潮文庫)
作品の紹介
「階段島シリーズ」の第3作。 舞台は階段島ではなく、現実世界。
小中学校の同級生にして、仲のいい友人だった真辺由宇が転校して2年。
夏の終わり、高校1年になった七草は、真辺に再会する。 真辺は、七草の高校に転入。
真辺は「引き算の魔女」を探していた。
七草は、ネットで魔女のことを調べ、同い年の安達という女子に出会う。 安達は、
七草にいっしょに魔女探しをしようと誘う。 しかし、七草は、安達に会う直前に
魔女と電話で会話し、真辺に対するこだわりを捨てていた、、、。
七草と安達は、魔女と接触した秋山に会いに行く。 七草は、秋山と二人だけで会い、
魔女に関する情報交換を行う。 やがて、魔女から七草に電話が入る。 魔女は、七草
に「真辺に電話をかけるべきか?」と質問する。 七草は「かけてください」と答える。
七草は、魔女とコンタクトをとって以来、夢の中で、もう一人の七草‐階段島の七草‐
に会っていた。 三度目の出会いで、もう一人の七草は「相原大地という小学2年生の
少年を守れ。真辺もそれを望んでいる」、さらに「お前は真辺を傷つけた」と告げる。
真辺も大地も、魔女の力を借りて、捨てたい自分の一部を捨てていた、、、。
その後、七草は真辺に大地を紹介してもらう。 大地は七草に家出の計画を明かす。
大地はまもなく家出を決行。 真辺は七草に大地をいっしょに探してほしいと頼む。
七草は、安達から大地の居場所を聞きだし、大地の隠れ家に向かう、、、、、。
読み始めてすぐに「えっ?階段島が舞台じゃないの?」と驚いたけど、現実世界の七草
と真辺の物語も読み応え十分。 階段島の住人、秋山や大地も出てきたし。
七草と真辺が何を捨てて、もうひとつの自分が階段島で暮らし始めたかという秘密も
明かされたし。 独特の世界観も健在。
第2作「その白さえ嘘だとしても」のブックレビューはこちら。
オススメ度:8.2
芝浜 (山本 一力著、小学館文庫)
作品の紹介
表題作を含む五編の落語を収録した落語小説集。
落語の脚本みたいなつくりかなと思って読み始めたら、全然違っていて。
落語の筋書きをなぞっているものの、これはもう時代小説の人情噺。
元のお話を知らなくてもだいじょうぶ。 オススメ度:8.1
なりたい (畠中 恵著、新潮文庫)
作品の紹介
「しゃばけ」シリーズの第14作。 「なりたい」にまつわる五編を収録。
妖になりたい男。 人になりたい神様。 猫に転生した男。
さまざまな「なりたい」を紡いだ物語。 あいかわらず安定のクオリティー。
前作「すえずえ」のブックレビューはこちら。
「しゃばけ」公式サイトはこちら。
オススメ度:8.1
泣き童子 (宮部 みゆき著、角川文庫)
作品の紹介
「三島屋変調百物語」シリーズの第三作。 六編を収録した連作短編集。
第三作に入っても、パワーが衰えず、高品質な短編がずらり。
むしろ怖さが増した本格的な物語が多かった印象。
第二作「あんじゅう」のブックレビューはこちら。
オススメ度:8.3
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