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読書感想文2020 part 4
「読書感想文2020」 part4は、8月〜10月の読書録です。
(11月〜12月は読書をお休み)
↓ Click NOVEL mark !
王とサーカス (米澤 穂信著、創元推理文庫)
作品の紹介
大学卒業後、5年務めた新聞社を退社した太刀洗万智、28歳。 フリーとなった
彼女は「月刊深層」の編集者から依頼されたアジア旅行特集の事前取材のため、
ネパールのカトマンズに向かう。
現地に到着してまもなく、国王殺害事件が発生。 皇太子が王族8人を殺害し、
自殺を図るが、重体であると報じられる。 万智は、直ちに、「月刊深層」の
記事のため、現地の少年、サガルをガイドとして取材を開始。 滞在先の民宿の
主人のつてで王宮に勤務する軍人、ラジェスワル准尉に取材を試みるが、取材に
応じてはもらえなかった。 翌日、ラジェスワルは遺体で発見される。 その
背中には「INFORMER(密告者)」と彫られていた、、、。
身の危険を感じながらも、万智は取材を続ける。 万智は、ラジェスワルが
殺されたのは、自分が取材のためにあったからではないかと疑念を抱く。
そして「月刊深層」に送る記事に、国王殺害事件とラジェスワルの殺害を関連
付けて書くべきか悩む。
やがて、万智に警察の保護がつく。 その後、ラジェスワルの真の殺害現場を
突き止めた万智は、徐々に事件の核心に近づいていく、、、。
450ページの大作。 ラスト50ページで畳みかけるようなドライブ感のある展開。
万智の冷静な推理、犯人の動機、この国の抱える闇。 秀逸なミステリーに
仕上がっていると思う。 けど、個人的には、世の中の高評価ほど、すごいとは
思わなかった。 期待しすぎたのと、あとは相性の問題か。
2016年度「このミステリーがすごい!」、2015年「週刊文春:ミステリーベスト10」、
2016年度「ミステリが読みたい!」第1位。 2016年「本屋大賞」:第6位
オススメ度:8.2
鍵のない夢を見る (辻村 深月著、文春文庫)
作品の紹介
計5編を収録した短編集。
地方の町に暮らす、ちょっと変わった女性の思い違い、思い込みを描いた佳作。
日常に潜む、ちいさな闇が犯罪に発展するさまを描いた三編は秀逸。
これまでの著者の作品とは違い、自己投影していない、ちょっとあぶない人たちを
主人公にした意欲作。 タイプの違う5編はどれもハイレベルなデキ。
2012年「直木賞」受賞作。 2013年ドラマ化。 オススメ度:8.4
誰かが足りない (宮下 奈都著、双葉文庫)
作品の紹介
計六編からなる連作短編集。
予約を取るのが難しい、駅前にある人気のレストラン「ハライ」。 古くて小さなその
お店の名は「晴れ」という意味の、どこかのことば。
その「ハライ」に10月31日午後6時に予約を入れる男女6人の物語。
彼女に振られたコンビニで働く26歳の青年。 認知症の症状に悩む一人暮らしの老婦人。
隣に住んでいた幼馴染を懐かしむ、残業続きの女性。 ビデオカメラが手放せない、ひき
こもりの18歳の少年。 ホテルのレストランでオムレツを焼き続ける20代の青年。
人の失敗の匂いがわかる20代の女性。
六つの物語に登場する6人の男女は、成功したわけでもないし、幸せの絶頂にいるわけでも
ない。 しかし、足りない誰かを待つことができるのは、幸せなことかもしれない。
読了後、なぜか、あたたかい気持ちにさせてくれる佳作。
2012年「本屋大賞」:第7位。 オススメ度:8.2
窓の向こうのガーシュウィン (宮下 奈都著、集英社文庫)
作品の紹介
佐古さんはケアセンターで働き始めた19歳の女性。
未熟児で生まれ、小学生のころ、父が失踪、団地で母と二人暮らし。 人の話に雑音が
混ざって、会話が聞きとれない、というやっかいな耳を持つ。 高校卒業時に薬問屋に
就職するが、一か月で倒産。 50時間の講習を受講したら誰でもとれるホームヘルパー
三級の資格を取得する。 ホームヘルパーとして働き始めるが、依頼主の話がうまく聞き
取れなくて、すぐに担当から降ろされる。 しかし、79歳で、左半身が不自由な横江先生
の話は、うまく聞き取れ、週三回の仕事が続いていく。
やがて、額装の仕事をする横江先生の息子の仕事を手伝うようになる。 さらに、中学校
の同級生、隼が横江先生の孫であるという偶然も重なり、佐古さんは、先生の家族とあた
たかい時を過ごし、少しずつ自分に自信を持ち始める、、、。
なにか大きな事件が起こるわけでもなく、登場人物も少ない。 不器用な生き方しかでき
なかった主人公が先生に出会い、先生の家族に出会い、額装に出会い、ゆっくりとゆっくり
としあわせになっていく物語。 読後感もじわ〜っとした余韻のある一作。
タイトルの「ガーシュウィン」は、名曲「サマータイム」の作曲家。 作中に「サマータイム」
を歌ったエラ・フィッツジェラルドのレコード「エラ・イン・ベルリン」が出てくる。
オススメ度:8.1
ポイズンドーター・ホーリーマザー (湊 かなえ著、光文社文庫)
作品の紹介
著者独特のテイストが散りばめられた、計6編を収録したミステリー短編集。
「ポイズンドーター」、「ホーリーマザー」の二編はつながったお話。
2016年「直木賞」候補作。 2019年ドラマ化。 オススメ度:8.2
サファイア (湊 かなえ著、ハルキ文庫)
作品の紹介
計7編を収録したミステリー短編集。 表題作「サファイア」をはじめ、作品のタイトルは
「ルビー」、「ダイヤモンド」など宝石の名前という趣向。
推理の醍醐味を堪能できる、趣向を凝らした作品集。 内容の濃い高品質な短編ばかり。
期待以上のデキ。 オススメ度:8.4
ジヴェルニーの食卓 (原田 マハ著、集英社文庫)
作品の紹介
印象派の巨匠であるマティス、ドガ、セザンヌ、マネの創作と人生を描いた短編集。
語り手は画家の身近にいた女性たち。 実在の人物を散りばめながらフィクションを
巧みに盛り込んだ秀作。 有名な絵画の裏側にあるドラマや画家たちの人生を垣間
見ることができる。
代表作である「楽園のカンヴァス」同様、キュレーターの経験がある著者ならではの
作品。 作中に出てくる絵画名を見て、Googleで画像検索したくなるくらいの人に
おススメ。 オススメ度:8.3
太陽の棘 (原田 マハ著、文春文庫)
作品の紹介
1948年、第二次世界大戦の3年後の沖縄。 米軍の若き精神科医、エドワードは、
沖縄アメリカ軍の従軍医として着任。 休日に、沖縄の画家たちが暮らすニシ
ムイ美術村を偶然見つける。 東京美術学校を出たタイラたちとの交流を深める
うち、かつて画家を志していたエドワードは、再び絵を描き始める、、、。
数々の苦難がタイラたちに降りかかるが、画家たちは懸命に乗り越え、エドワード
も彼らを支える。 しかし、ニシムイの人々に理不尽な行動をとった米軍基地の
少佐を殴り、エドワードに帰国命令が出される、、、。
画家たちの希望、エドワードとの友情を描きつつも、戦後沖縄の苦難の描写に
胸が痛くなり、必ずしも読後感がよかったとは言い切れない一作。
実話をベースにした作品。 オススメ度:8
あなたの人生、片づけます (垣谷 美雨著、双葉文庫)
作品の紹介
片付け屋、大庭 十萬里の活躍を描いた連作短編集の体裁。 計4編を収録。
汚部屋に暮らす30代のOL。 妻に先立たれた60代の職人。 大きな屋敷に一人で暮らす
70代の女性。 死んだ息子を忘れられない40代の主婦。 十萬里の本来の仕事は家の
片付けのコンサルだが、同時に顧客の人生を再生するという物語。
とはいえ、各話の主人公は、十萬里の顧客たちで、十萬里は準主役という位置づけ。
期待以上のデキ。 読み応え十分。 読後感もグッド。 オススメ度:8.4
君は月夜に光り輝く (佐野 徹夜著、メディアワークス文庫)
作品の紹介
岡田卓也。 私立の中高一貫校で高一になったばかり。
卓也のクラスには、中一の五月から入院して学校に来ていない渡良瀬まみずという
女子がいた。 まみずは発光病という、月の光に照らされると体が光を放つ特殊な
病気に侵されていた。
卓也は、クラスの寄せ書きをまみずに持っていく役割を友人の香山から押し付けら
れる。 まみずを訪ねた卓也は「死ぬまでにやってみたいこと」をまみずの代わり
に実行する役割を引き受ける。 余命半年と言われているまみずのために、メイド
喫茶やクラブに行ったり、バンジージャンプに挑戦する。
卓也は、3年前に、当時高一だった姉、鳴子を交通事故で亡くしていた。 鳴子の
恋人も、鳴子が亡くなる半年前、交通事故で亡くなっていた。 鳴子の恋人の弟が
香川であり、香川は、卓也が中学でいじめにあっていたとき、救ってくれた恩人でも
あった。 香川は、中学入試の際、まみずと出会い、それ以来、まみずを想い続けて
いた。 意を決して、まみずに告白するが、まみずから卓也が好きだと告げられる。
死期が近づき、ようやく卓也とまみずは、両想いとなる、、、。
読みながら「君の膵臓をたべたい」を思い出した。 どちらが先に書かれたのかは知ら
ないけど、どちらも「世界の中心で愛を叫ぶ」よりからっとした世界観に好感が持てる。
「君の膵臓をたべたい」を思い出しはしたけれど、死期の近い少女との最後の時間の
過ごし方、想いは、それぞれ違っていて。 若い人向きの先品とは思うけど、感情移入
して読めた。 2016年「電撃小説大賞」受賞作。 オススメ度:8.1
三日月が円くなるまで (宇江佐 真理著、角川文庫)
作品の紹介
サブタイトルは「小十郎始末記」。
江戸城において、奥州の仙谷藩主が、不仲の隣藩、島北藩の藩主に恥をかかされる。
藩主の恥をすすぐため、藩士の正木庄左衛門は、島北藩主の暗殺を企てる。
正木の朋輩、刑部小十郎は、父から正木の助太刀を命じられ、父が懇意にする古道具屋
「紅塵堂」を訪ねる。 主の八右衛門は店を妻にまかせ、岡っ引きをしている元武士。
小十郎は「紅塵堂」の所有する近所の家で暮らし、島北藩邸に中間として潜入した正木
と連絡をとりあう。
小十郎は、やがて、放浪の雲水、賢龍と懇意となり、八右衛門の娘、ゆたに淡い恋心を
抱くようになる。 そんな中、父が危篤との知らせが入り、正木は故郷に向かう。
仙谷藩主は若くして憤死。 小十郎は、賢龍とともに、正木のもとに出立する。
小十郎と賢龍は、正木と同志たちとともに、島北藩主を参勤交代の道中で襲撃すべく、
待ち伏せするが、島北藩が経路を変更、襲撃は不首尾に終わる。
襲撃の犯人探しに躍起になる島北藩から身を隠すため、小十郎は江戸藩邸に幽閉され、
賢龍は越前の永平寺に旅立つ。 やがて、正木が捕縛され、獄門の沙汰が下る。
小十郎は父から藩士の家の養子として婿入りせよと命じられ、藩邸を飛び出し、ゆたの
もとへ向かう、、、、、、。
小十郎の成長を軸に、ゆたとの恋、賢龍との絆、武士の不条理を描いた佳作。
東北の二つの藩の争いである「檜山騒動」という史実をもとに、刺客となった藩士の
助太刀をした男の運命をフィクションとして紡いだ作品。
オススメ度:8.2
極道大名3 (風野 真知雄著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
シリーズ第三作にして完結編。
久留米藩主、有馬虎之助と、虎之助に恨みを持つ八代将軍、吉宗の暗闘は続いていた。
虎之助は、座頭勝を名乗る紀州忍者の首領、川村一心斎を久留米藩の屋敷に拉致。
吉宗を風刺する瓦版を発行する。 吉宗と大岡越前は、久留米藩の屋敷に紀州忍者の
くノ一を侵入させるが、虎之助の返り討ちにあう。
まもなく、吉宗に呼び出された虎之助は、丁半ばくちを持ち掛け、いかさまで一万両
を手にする。 すると、吉宗が紀州藩を賭けるので、虎之助に有馬藩を賭けるように
命じる。 虎之助は勝負に勝つが、吉宗は、一万両も紀州藩も冗談だったと言い出す。
吉宗が家来を呼んで虎之助を捕えさせる前に、虎之助は脇差を吉宗に突きつけ、江戸城
を脱出する。 吉宗は、再び紀州忍者を有馬藩邸に送り込むが、虎之助の罠にかかり、
命を落とす。 さらに、第三の紀州忍者も有馬藩邸に侵入するが、虎之助が撃退する。
紀州忍者が頼りにならないと考えた吉宗は、伊賀忍者を久留米藩邸に送り込むが、伊賀
の副頭領と久留米藩の家老は昵懇の仲だった。 さらに、川村一心斎が虎之助側に寝返る。
その後、虎之助は、一転して、吉宗と大岡越前を褒める噂を流し始める。 しかし、噂
の元は、やくざや駕籠かきなので、世間での吉宗の評判は、どんどん落ちていった。
業を煮やした吉宗は、大岡越前と共謀し、鷹狩りにかこつけ、久留米藩邸を急襲する。
しかし、藩邸に虎之助の姿はなかった、、、、、、。
たいした危機もなく、攻勢の連続で一気に吉宗を寄り切った感のある巻。
「大名やくざ」(全八巻)から続くシリーズも、これにて読み納め。
第二作のブックレビューはこちら。
オススメ度:8.1
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