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読書感想文2020 part 1

「読書感想文2020」 part1は、1月〜2月の読書録です。

 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  ロスジェネの逆襲 (池井戸 潤著、文春文庫)   作品の紹介 

「半沢直樹」シリーズの第三作。
東京中央銀行から東京セントラル証券に出向となった半沢直樹。
営業企画部の部長として着任した直後、IT企業の電脳雑伎集団から新興のIT企業、
東京スパイラルの買収を依頼される。 しかし、半沢の部下のリークにより、仕事
を東京中央銀行の証券営業部、伊佐山に横取りされる。
電脳雑伎集団は、東京中央銀行の働きにより、東京スパイラルの元役員の株を購入し、
公開買い付けを開始。 これに対し、東京スパイラルの社長、瀬名は、太洋証券の
提案で、新規の株式を発行し、大手IT企業、フォックスに株を引き受けてもらう話
を進める。 しかし、半沢と、部下で瀬名の学生時代の親友である森山の調べで
フォックスが電脳雑伎集団に買収される予定であることが判明する。
半沢は東京スパイラルの瀬名と契約を結び、東京中央銀行、電脳雑伎集団との対決
に挑む、、、、、、。
バブル世代の半沢とロスジェネ世代の森山が親会社相手に倍返しを仕掛けるお話。
テレビドラマから7年の時を経ても、イメージが強烈に残っている作品。
2020年4月からスタートするドラマのパート2に合わせて第三作と第四作を購入。
ドライブ感が半端ない作品。 一気読み必至。 オススメ度:8.5

コメント  銀翼のイカロス (池井戸 潤著、文春文庫)   作品の紹介 

「半沢直樹」シリーズの第四作。
東京中央銀行 営業第二部次長に復帰した半沢直樹に、破綻寸前の航空会社、帝国
航空の再建という難題が降りかかる。 半沢は、直ちに田島をはじめとする帝国
航空担当の部下を率い、再建策を完成し、有識者会議でも承認される。
しかし、政権が交代。 新たに国交相となった白井亜希子が再建策を白紙撤回。
白井が立ち上げた帝国航空再生タスクフォースが、帝国航空のメインバンクである
政府系の開発投資銀行、準主力行の東京中央銀行をはじめとした銀行に債権の七割
放棄を打診する。
無茶な要求に断固反対姿勢をとる半沢。 しかし、白井だけではなく、与党幹部も
東京中央銀行に大きな圧力をかけ続ける。
さらに、半沢の天敵ともいえる金融庁の検査官、黒崎が、帝国航空の与信判断に
関するヒアリングに訪れる。 東京中央銀行の誤った情報のせいで帝国航空の与信
判断を誤ったという結論を導き出したい黒崎。 しかし、帝国航空の前任の担当者
である審査部の曾根崎が、誤った情報を出したのは、帝国航空であると主張する。
窮地を逃れたかに見えたが、金融庁に提出した情報に誤りがあったのは、帝国航空
のミスではなく、曾根崎が数字を改ざんした結果であることが判明する。
曾根崎の後ろ盾である常務の紀本は、白井の後ろ盾である与党の大物議員、箕部と
長年に渡り、持ちつ持たれつの関係にあった。 紀本は、箕部から債権放棄の強い
圧力を受ける。 加えて、帝国航空タスクフォースのリーダー、乃原に、過去に
箕部と紀本が犯した不正を知られ、乃原からも強い圧力を受ける。
一方、半沢も、紀本の過去の不正の核心に近づいていく、、、。
半沢を追い落とそうとする紀本ら銀行の内なる敵、そして、債権放棄を迫る与党と
タスクフォースという外敵に、半沢は頭取とともに立ち向かっていく、、、。
第三作同様、ずば抜けたリーダビリティーとドライブ感。 このシリーズは「下町
ロケット」と並ぶ、著者の二大傑作。 「課長島耕作」みたいに、出世した半沢の
その後を読みたい。 続編出るかな? オススメ度:8.5

コメント  シャイロックの子供たち (池井戸 潤著、文春文庫)   作品の紹介 

大田区の東京第一銀行長原支店で100万円の現金紛失事件が起こる。
支店長、副支店長以下が自腹で100万円を補填し、隠蔽する。
営業課の西木は、100万円を盗んだ犯人捜しを始めるが、まもなく失踪。
しかし、西木の失踪は、大掛かりな犯行がからんでいた、、、。
金融ミステリーとしては一級品。 同時に連作短編の体裁で語られていく長原支店の
行員たちの生きざまを描いた銀行小説としても秀逸。 しかし、著者の銀行モノに
頻出する銀行の暗部は、読んでいてツラくなる。 オススメ度:8.1

コメント  二代目の帰朝 (森見 登美彦著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

「有頂天家族」の第二作。
京都の狸界の名門、下鴨家。 狸界の頭領、総一郎亡き後、三男の矢三郎は、
天狗の能力を身につけた美女、弁天が世界一周クルーズから帰るのを待っていた。
そんな中、如意ヶ嶽を鞍馬天狗に奪われ落ちぶれた天狗の赤玉先生の二代目で
ある息子(元人間、現天狗)が帰国。 赤玉先生と対決することに、、、。
さらに、長兄、矢一郎の婚約、幻術師、天満屋の出現、天敵、夷川早雲の陰謀など
矢三郎の周辺はあいかわらず騒がしい。
さらに弁天が帰国、矢一郎の頭領就任準備、引きこもりの次兄、矢二郎の旅立ち
という怒涛の展開の中、矢三郎と元許嫁、海星との婚約が復活する、、、。
第一作に続き、エンタメ色満載、抜群のリーダビリティー。 場面がくるくる入れ
かわり、登場人物も多いのに、話が複雑にならないのは著者の構成力のなせる技か。
第一作よりスケールアップした感。 第三作に期待。
第一作のブックレビューはこちら
500ページを超える大作。 2017年アニメ化。 オススメ度:8.5

コメント   (東山 彰良著、講談社文庫)   作品の紹介 

1975年、台湾を長年に渡り率いた蒋介石総統が死去。 一か月後、台北の高等中学
2年の17歳、葉 秋生(イエ チョウシェン)の祖父、尊麟が殺害される。
尊麟は、戦時中、国民党軍に属し、中国本土、青島で日本軍の間諜をはじめ56人の
村民を惨殺した過去を持っていた。 警察は怨恨の線で捜査するが、事件は迷宮入り
する、、、。
秋生は進学校に通っていたが、悪友、小戦に頼まれた替え玉受験がバレて退学に。
私立の学校に転校するも、さえない日々。 二歳上の幼馴染で看護師の毛毛(マオ
マオ)と付き合い始めるが、大学受験に失敗し、陸軍軍官学校に入学。 しかし、
半年で自主退学を決意。 実家に戻るが、ヤクザの舎弟となった小戦にトラブルに
巻き込まれ、二年間の兵役に就く。
兵役を終え、台北に戻ると、毛毛は医師と結婚し、アメリカに旅立つ。 毛毛との
別れに戸惑い、落ち込む秋生。 しかし、毛毛が秋生のもとを去ったのには、意外
な理由があった、、、。
やがて、秋生は叔父の友人の会社に就職。 日本語の通訳として順調なビジネスマン
生活を送る。 日本で働く、台湾出身の女性、夏 美玲という恋人もできる。
偶然、祖父、尊麟殺害の犯人がわかった秋生は、単身、青島に旅立つ、、、。
既視感のまったくないオリジナリティーの高い小説。 しかし、なじみのない世界観
のせいか、読み進めるのに少し体力が必要だった。 この本を手にした人がみんな
読了できるわけじゃないのでは?
2015年「直木賞」受賞作。 オススメ度:8

コメント  ヒトラーの試写室 (松岡 圭祐著、角川文庫)   作品の紹介 

1935年、町田で暮らす20歳の柴田彰は、父のもとで大工見習いの仕事に就いていた。
活動写真の俳優になりたいと思い、父に話すが、反対され、勘当される。
かつて勉強したドイツ語を生かせる青年役のオーディションを受けるが、あえなく
落選。 円谷英二率いる撮影技術研究所の臨時雇いとなる。 円谷は原節子主演の
日独合作映画「新しき土」担当していた。 映画は、ヒトラーのもとでナチスの
宣伝大臣のゲッベルスにも評価される。
やがて彰は恋人の敏子と結婚。 彰の会社は合併で、東宝が誕生。 円谷は特殊
技術課の課長となる。 次第に戦争の足音が近づく中、特殊技術課の仕事は軍部
の映画ばかりになっていく。 やがて第二次世界大戦が始まる、、、。
ドイツでは、ゲッベルスがイギリスの権威を失墜させるための映画「タイタニック」
の製作に着手。 しかし、沈没シーンの特撮が暗礁に乗りあげる。 円谷たちの
特撮技術を偶然、目にしたヒトラーは東宝に協力を要請。 かくして円谷の代理と
してドイツ語の素養がある彰がドイツに向かう、、、。
彰の力で「タイタニック」の特撮は成功。 映画が無事完成し、彰は名誉党員となる。
仕事を終えた彰は日本に帰ろうとするが、戦局がそれを許さなかった。 そして彰
の技術がナチスの謀略に利用されることになる、、、。
「千里眼」シリーズや「万能鑑定士Q」シリーズのイメージが強い著者がこういう
作品も書くのかと驚きとともに感心。 とはいえ「解説」によると、最近は近代史を
扱った作品も手がけているらしい。
舞台設定も新鮮。 リーダビリティーもなかなか。 オススメ度:8

コメント  幸せの条件 (誉田 哲也著、中公文庫)   作品の紹介 

理学部を卒業して2年。 小さなメーカー、片山製作所で伝票整理の仕事をする
瀬野梢恵。 恋人の智之とも倦怠期。 そんな折、社長から長野出張を命じられる。
会社が開発したバイオエタノール精製装置で使用する米をつくってくれる農家を
探すまで会社に戻るなと厳命される。 穂高村の農協で紹介された農家をまわるが、
門前払いの連続。 宿泊先のユースホステルで紹介された農業法人「あぐもぐ」を
訪ねると、二度目の訪問で、社長の安岡に、まずは農業を知るために「あぐもぐ」
で働くよう誘われる、、、。
「あぐもぐ」は安岡と妻の君江、従業員3人の小さな会社。 米や野菜をつくるかた
わら、村の田畑を休耕地にしないよう農家から農作業の仕事を請け負っていた。
さっそく住み込みで働き始めた梢恵は、一週間後、社用でいったん東京に戻るが、
東日本大震災が発生。 改めて農業のたいせつさを認識し、すぐに長野に戻る。
「あぐもぐ」のみんなにも可愛がられ、梢恵は農業の基本を次々と体得していく。
やがて、福島で被災した安岡のいとこ、誠の家族も「あぐもぐ」の仲間に加わり、
農業に対する梢恵の思いは、どんどん大きくなっていく。
オススメ度:未定

コメント  高校入試 (湊 かなえ著、角川文庫)   作品の紹介 

県立橘第一高校。 県下有数の進学校。 入試前日の準備の時、教師たちは
「入試をぶっつぶす!」と書かれた紙が黒板に貼られているのを見つける。
英語主任、坂本の携帯が盗まれるなど不可解な事件が起こるが、事なかれ
主義の校長、教頭は、いたずらと決めつける、、、。
入試当日、受験者の携帯を試験前に回収するが、試験内容がネットの掲示板に
リアルタイムで書き込まれる。 試験終了直前、受験者の一人、県会議員の娘、
芝田麻美の携帯が鳴る。 携帯所持は、失格の処分が下されるところ、注意書き
の不備をつかれ、不問となる。 問題となった注意書きは、昨年のものとすり替え
られていた。 さらに、英語の新任教師、春山杏子の携帯が盗まれていた。
なんとか試験が終わったものの、採点中に英語の答案が一枚なくなっていること
が発覚。 すると、受験生の父でもある同窓会長の沢村が校舎内で答案を見つける。
しかし、その答案に書かれていた受験番号は紛失した答案の番号ではなく、沢村の
息子、哲也の受験番号だった、、、。
入試が終わっても、ネットの掲示板には学校の失態が刻々と書き込まれていく。
沢村は、芝田麻美の母、昌子とともに、学校の対応を糾弾する。 二人をなだめて
帰らせ、深夜12時を過ぎたころ、ようやく犯人の一人を見つける、、、。
試験前日の16:00から試験日の深夜1時すぎまでネットの掲示板に次々に書き込ま
れることばとことばの間に登場人物たちの独白をはさみ込むスタイル。
登場人物は高校教員、受験生、在校生、保護者など20人以上。 一つひとつの
独白が短いのでテンポがよく、リーダビリティーも高い。 けど、犯人の動機に
イマイチ感情移入できなかったかも。
2012年ドラマ化。 脚本は著者がてがけ、小説化したのがこの作品。
オススメ度:8.2

コメント  水族館ガール 4 (木宮 条太郎著、実業之日本社文庫)   作品の紹介 

水族館のイルカトレーナー、嶋由香の奮闘を描く、人気シリーズの第四作。
由香の先輩であり恋人の梶良平の活躍により、大阪の海遊ミュージアムと
千葉のアクアパークは、ウェストアクアからの出資を受け、姉妹館になる。
一方、由香は、けがをした飼育員、吉崎に代わってペンギンの担当になる。
やがて、高齢のペンギンが初めて妊娠し、出産するが、命を落とす、、、。
母ペンギンを亡くした生まれたてのペンギンの前途が危ぶまれるが、奇跡が
起こる、、、。
その後、海遊ミュージアムから、由香の高校の後輩でもある咲子が研修生と
してアクアパークにやってくる。 イルカ担当の後輩、ヒョロと咲子と共に
由香は、海獣研究者、沖田の研究テーマの観察実験を取り仕切ることに。
実験は失敗したかに見えたが、またしても奇跡が起こる、、、。
第三作同様、水族館のありかた、海獣のイメージと現実のギャップなどを
わかりやすく、興味深く描いている。
第三作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  任侠書房 (今野 敏著、中公文庫)   作品の紹介 

任侠 × お仕事シリーズの第一作。
今どきめずらしい任侠道に重きを置く阿岐本組。 組長と組員5人の弱小団体
ながら組長の阿岐本は、業界で強い影響力を持っている。
阿岐本は、兄弟分の永神が処分に困った、倒産寸前の出版社「梅之木書房」の
社長に就任。 代貸の日村を役員に就任させ、経営再建に乗り出す。
若い組員の真吉の意見も取り入れながら、週刊誌、ファッション誌、書籍に
次々と新風を吹き込む。 最初は阿岐本と日村を門外漢だと軽く見ていた社員
たちも次第にその手腕と人間を認めていく。
しかし、所轄署の暴力対策課の刑事の嫌がらせに屈し、真吉が逮捕される。
日村は、社員の力を借りながら、警察権力に立ち向かってく、、、。
日村の人物造形が秀逸。 まじめで一本気な彼が悩む姿がユーモラスに描かれ
ている。 「任侠 × お仕事」というスキームの設定も新鮮。
シリーズ第二作「任侠学園」のブックレビューはこちら
シリーズ第三作「任侠病院」のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.1

コメント  サラバ! 上 (西 加奈子著、小学館文庫)   作品の紹介 

1977年、圷(あくつ)歩(あゆむ)は、父の赴任先であるイランのテヘランの
病院で生まれる。 1979年、イラン革命により、一家は帰国を余儀なくされる。
両親と4歳上の姉、貴子とともに、母、奈緒子の大阪の実家近くのアパートに
落ち着く。 そして、半年後、中古の一軒家に引っ越す。 しかし、やたら周囲
をかき回す空気の読めない姉、貴子の特異な行動は、母の大きな悩みだった。
そんな姉を身近で見て育った歩は、子どもながら如才なく周囲とうまくやって
いく術を身につける。 歩が小学校に入学したころ、貴子の特異な行動は、やや
改善したかに見えたが、てんかんの発作が始まる。 やがて、両親から受け継いだ
高身長、父に似たごつごつとした筋っぽい体型ゆえ、貴子は「ご神木」という
あだなを付けられ、孤立を深めていく、、、。
まもなく、父のエジプト赴任が決まる。 歩は8月にカイロに旅立ち、9月から
日本人学校の1年生に編入する。 貴子は同級生に恋をして、奇行がおさまる。
2年後、歩は、ヤコブという同い年のエジプト人の男の子と大親友になる。
二人は毎日のように遊び、別れ際に歩が使う「サラバ」が二人の魔法の言葉になる。
二人にとって「サラバ」は「さよなら」であり「こんにちは」であり、「元気か」
であり「グッドラック」だった、、、。
しかし、両親の離婚が決まり、歩は、母、姉と共に日本に戻ることになる、、、。
イラン → 日本 → エジプト と舞台が変化する上巻。 猟奇的な姉、貴子とあき
らめのいい、そつなく生きる歩との対比がおもしろい。
2014年度「直木賞」受賞作。 2015年「本屋大賞」第2位。 100万部突破。
特設サイトはこちら。  オススメ度:8.1

コメント  サラバ! 中 (西 加奈子著、小学館文庫)   作品の紹介 

日本に帰国した歩は、母の実家の近くで暮らし始める。 新しい家は父が購入した
もので、養育費、生活費の他に、家のローンまで父が負担してくれることになった。
歩は、母の姓である今橋を名乗り、小学5年生の4月から新しい学校に通い始める。
歩の学校生活が順調に始まったのとは対照的に、貴子の中学校生活は、悲惨なもの
になる。 やがて貴子は登校拒否となり、高校にも進学しなかった。
近所では、昔なじみの矢田のおばちゃんが新興宗教の教祖のように祀り上げられて
いき、貴子は矢田のおばちゃんと行動をともにする。
母は次々と恋人をつくる生活。 歩は、中学校ではサッカー部の仲間と過ごす時間
をたいせつにし、仲間と同じ私立の男子校に進学する。 高校でもサッカーを続け、
須玖(すぐ)という大親友ができ、充実した毎日を送る、、、。
しかし、1995年、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件が発生。 須玖は精神のバラ
ンスを崩し、学校に来なくなる。 地下鉄サリン事件の影響で矢田のおばちゃんを
取り巻く環境は一変し、貴子は部屋から出なくなる。 やがて、父のドバイ赴任が
決まり、貴子は父とともにドバイに旅立つ。 そして歩は東京の大学に進学する。
大学で一年間、放蕩した生活を送り、2年生になり、映画好きの男子が集まるクラブ
に入部。 アルバイト先で知り合った、晶という、ひとつ年上の彼女もできる。
歩にとってクラブは居心地のいい空間だったが、鴻上なずなという下級生が入部して
クラブの人間関係がぎくしゃくし始める。 鴻上は性に奔放な女子だった。
歩はクラブに顔を出さなくなり、晶の就職をきっかけに彼女とも別れる。 しかし、
軽蔑していたはずの鴻上と恋愛感情抜きで親友になる、、、。
歩は、就職をせずに、バイト先のレコード屋兼本屋での仕事を続けるフリーターに
なる。 やがて、父のドバイ赴任が終わり、父と貴子は巣鴨で暮らし始める。
歩の文才が雑誌の編集長の目にとまり、徐々にフリーライターとしての地位をかた
めていく。 そして、ふたつ年上のフリーカメラマンの紗智子という恋人ができる。
そんな中、貴子が神出鬼没のストリートパフォーマーとして話題になり始める。
祖母が亡くなり、母は8歳年下の男と再婚。 父は退職して、出家する、、、。
歩の変わっていくさま、家族が変わっていくさまを描いた中巻。 上巻とはちがった
テイスト、おもしろさ。 個人的には中巻のほうが好みか。
オススメ度:8.2

コメント  サラバ! 下 (西 加奈子著、小学館文庫)   作品の紹介 

歩の恋人、紗智子が貴子の撮影を望むが、歩は仲介を拒否。 しかし、貴子は撮影
を強行。 素顔を晒した貴子は、ネットで非難され、歩は紗智子と別れる。
そんな中、矢田のおばちゃんが亡くなり、貴子は、散骨のため、世界を回る旅に
出る。 3年の放浪の後、サンフランシスコで初恋の人、牧田に再会。 その後、
2年間、サンフランシスコに腰を落ち着ける。
歩の母、奈緒子は、還暦を過ぎ、離婚する。
歩は30歳を迎えたあたりから、薄毛に悩まされ、仕事も減っていく、、。
しかし、33歳のとき、お笑い芸人となった須玖とインタビューがきっかけで再会。
長年のブランクはすぐに埋まり、須玖との親交を深める。 やがて鴻上とも再会。
歩は、須玖、鴻上と昔に戻ったような時間を過ごす、、、。
37歳になった貴子は、6歳年上のアメリカ人、イサクと結婚。 大阪に里帰りする。
実家で歩が再会した貴子は、常識のある大人の女性になっていた。 最悪の関係
だった母とも和解し、歩にも信じるものを見つけるように諭す。
一か月後、東京に戻った歩は、須玖と鴻上が付き合い始めたことを知り、裏切られた
気持ちになる。 働きもせず、誰とも会わず、図書館通いに明け暮れる毎日だった
歩は、エジプトで革命が起こったことを知る。 エジプトを訪れた歩は、ヤコブと
再会。 空白の年月を埋めきれないと感じた歩だったが、ヤコブの「サラバ!」に
救われる、、、。
帰国後、歩は、小説を書くことを決意。 須玖と鴻上とも和解。 サンフランシスコ
の姉を訪れ、自分の信じられるもの、小説を見つけたことを宣言する。
鴻上が妊娠。 子どもの名前を「歩」にすると告げられる、、、。
帰国後、歩は3年かけて、小説「サラバ!」を完成させ、生まれた地、イランを訪れる。
歩の失速と再生を描いた下巻。 全編を通して、独特のテイスト、不思議な感覚を
エンジョイできるかどうかが、この小説を評価するか否かの分かれ目か。
オススメ度:8.1

コメント  小暮写眞館 T (宮部 みゆき著、新潮文庫)   作品の紹介 

高校一年生の花菱英一が、両親、七歳下の弟、光とともに引っ越したのは、
シャッター商店街で廃業した「小暮写眞館」だった。 英一の両親は写真館
をふつうの住宅用にと購入した。
引っ越し後しばらくして近所の女子高生が小暮写眞館の袋に入った心霊写真
を持ち込む。 その写真には六人の男女の他に、その場にいない若い女性が
写っていた。 英一は、親友の「テンコ」こと店子(たなこ)力(つとむ)
とともに写真の持ち主を探し始める。 やがて、「小暮写眞館」の売買を仲介
したST不動産の社長、須藤から写真に写る人物のうち、三人が火事で焼死した
ことを教えられる。 さらに調査を進めた英一は、写真に写った若い女性が生存
していることを突き止め、その女性に会いに行く、、、。
第一巻は、英一が遭遇する写真にまつわる最初のミステリーを描いている。
いないはずの女性が写真に写ったのは、何かのトリックかと思って読み進めた
ら、意外な結末にやや驚き。 おススメ度:8.1

コメント  小暮写眞館 U (宮部 みゆき著、新潮文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「世界の縁側」。
英一が心霊写真の謎を解決したことが同級生や先輩たちの間で大げさに話題
になる。 困惑する英一の前にバレー部の二年生の女子、田部が現れ、心霊
写真の謎解きを依頼する。 その写真には、田部と先輩、河合公恵の家族三人
が笑顔で写っていたが、それとは別に泣き顔の家族三人が心霊写真のように
写っていた。 英一は、親友の「テンコ」こと店子力、そしてテンコの友だち
の「コゲパン」こと寺内千春に調査への協力を依頼する。
問題の写真の撮影者は、公恵の婚約者だった足立という男。 しかし、この
写真を撮影後、公恵の父は急逝。 公恵と足立の婚約も解消されていた。
英一は、意を決して、公恵、足立に会いに行き、写真の謎を解く、、、。
第一巻同様、心霊写真には何のトリックもないが、心霊写真が生まれた謎解き
を巡るミステリーが本題。 あわせて青春小説の要素も強く、家族を描いた
物語でもある本作は、若い人の宮部みゆきさんの入門書としても最適かも。
オススメ度:8.2

コメント  小暮写眞館 V (宮部 みゆき著、新潮文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「カモメの名前」。
高校二年になった英一は、ST不動産の社長、須藤から写真の謎解きを依頼
される。 須藤の妻のママ友からまわってきた写真は小学生のお誕生会の
スナップ。 しかし、室内の写真にもかかわらず、一羽の鳥が写っていた。
英一の弟、光は、その鳥をぬいぐるみだと一蹴する。
しかし、写真を撮影した、不登校児の小学六年生、牧田君は、その鳥をカモメ
だと断言する。 英一は、牧田君が通うフリースクールでアルバイトをして
いる、高校の鉄道愛好会のヒロシとブンジから牧田君の情報を得る。
英一と光は、小暮写眞館の創業者、小暮泰治郎氏の娘、石川信子に会いに行き、
泰治郎氏の生い立ちや過去を聞く。 光は、泰治郎氏が霊となってまだ写真館
で暮らしていると信じていた。
やがて、かつて英一に心霊写真を持ち込んだ女子高生の兄、川島仁志から牧田
君の写真のカモメが出てくる自主製作映画の情報を得る。 英一はST不動産
の事務員、垣本順子とその映画を観て、牧田君の写真の秘密を知る。 さらに
フリースクールの校長から牧田君の不登校の理由を聞かされる、、、。
第三巻の写真の謎は、一巻、二巻とは異次元の種類で、肩すかしを食ったよう
な気分。 ミステリー要素が少なかった分、小暮泰治郎氏のエピソードや英一
と垣本順子の距離が縮まったプロセスが描かれていたが、前の二巻と比べると
動きが少なかった印象。 おススメ度:8.1

コメント  小暮写眞館 W (宮部 みゆき著、新潮文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「鉄路の春」。
七年前に四歳で亡くなった英一の妹で光の姉、風子の死を境に、英一の父、秀夫
は実家と縁を切っていた。 しかし、秀夫の父が危篤である知らせが入り、断固
父に会うことを拒否した秀夫は妻の京子と大喧嘩。 家出した秀夫と偶然会った
英一は、父とともにテンコの家に泊まらせてもらう。 秀夫は、風子の死を京子
のせいにした秀夫の母や義姉との確執を打ち明ける、、、。
風子の死は、いまだに花菱家全員に暗い影を落としていた。 秀夫、京子はもち
ろんのこと、風子が亡くなったとき、まだ二歳だった光までも京子が自分を看病
している間に風子が急死したことを悟り、自分を責めていた。 そして、当時、
九歳だった英一も風子の病状を知りながら何もできなかった自分を責めていた。
そんな中、英一にとって垣本順子は徐々にかけがえのない存在になっていく。
順子は母と確執を抱えており、実家を逃げるように飛び出し、ST不動産で働いて
いたが、母親に居場所を知られてしまう、、、。
英一は、秀夫の父の納骨に、秀夫の代理で出席することを決意し、順子に同行を
依頼する。 そして、祖母や伯父、叔母の前で、風子の死を京子のせいにしたこと
を糾弾し、絶縁宣言をする。
順子は、英一に、自分も家族との関係にケリをつけると宣言する。 ケリがついたら
英一に連絡をすると言ったまま、順子が英一の前に姿を現すことはなかった、、、。
風子の死にまつわる花菱家の人々の消えない哀しみ、垣本順子が振り切ったはずの
哀しい過去、そして英一と順子の不器用であたたかい関係を描いた最終巻。
英一と順子の距離感の描き方が秀逸。 読後感の余韻が大きな作品。
オススメ度:8.2

コメント  赤絵そうめん (山本 兼一著、文春文庫)   作品の紹介 

「とびきり屋見立て帖」シリーズの第三作。 表題作を含む六作を収録。
京の老舗の茶道具屋「からふね屋」の娘、ゆずと二番番頭だった真之介が駆け落ち
同然で夫婦になり、開いた道具屋「とびきり屋」が舞台の人情話。
おなじみの人物に加え、新たな登場人物も出てきて、読者を飽きさせない。
第三作になってもパワーが落ちず、安定感も高い。 しかし、著者の逝去により、
続編が読めないのが残念。
第二作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

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