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読書感想文2019 part 6

「読書感想文2019」 part6は、11月〜12月の読書録。

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コメント  にじいろガーデン (小川 糸著、集英社文庫)   作品の紹介 

35歳の泉は夫と別居して半年。 小学一年生の草介と二人暮らし。
19歳の「チョコ」こと千代子は高校三年生。 オーストラリアに一年留学していた。
ある日、泉は駅のホームで自殺しようとしていた千代子に声をかけ、自宅に連れ
帰る。 すぐに二人は愛し合うようになる。 千代子は高校を休学、泉は離婚して、
いっしょに暮らす決意をする。 泉と千代子と草介は、千代子が「マチュピチュ村」
と呼ぶいなかに引っ越し、小学校の分校だった建物で暮らし始める。
泉と千代子は、性的少数派をあらわす「レインボーフラッグ」をつくり、掲げる。
やがて千代子の妊娠が発覚。 泉はガソリンスタンドで働き始める。
千代子は女の子を出産、草介が「宝」と名付ける。 家族が四人になった暮らしは
順調にすぎ、周囲にも徐々に二人の関係をカミングアウトしていく、、、。
草介が中学生に、宝が五歳になったころ、泉が過労で倒れる。 千代子は念願だった
民宿を始めようと提案し、泉は仕事を辞める。 半年かけて家を改修し、「ゲスト
ハウス虹」がオープン。 二人の仕事は、徐々に軌道にのっていく、、、。
草介は高校卒業を機に家を出て就職、コールセンターで働き始める。
数年後、千代子が子宮がんにかかる。 手術は成功し、家族四人でハワイ旅行に
出かける。 千代子の両親も招き、泉と千代子は結婚式をあげる、、、。
数か月後、宝は高校入学を前に中学浪人を決意。 自宅で受験勉強を始める。
まもなく千代子のがんが再発。 余命三か月と宣告される。 草介も家に戻り、
泉と宝と共に千代子との最後の日々を送る。 千代子は家族に見守られ、自宅で
静かに最期のときを迎える、、、。
千代子の死から一か月も経たないうちに、草介がバイク事故を起こし、植物状態に
なる。 宝は、草介が千代子のことが好きで、自殺を図ったのではないかと推測
するが、真相はわからなかった。 宝は無事、高校に合格。 しかし、六月から
寮生活になる。 草介の昏睡状態は続くが、泉と宝は、前を向いて生きていこうと
心を新たにする、、、。
四章建ての構成。 語り手が、泉、千代子、草介、宝と進んでいく。
冒頭から物語の世界に入り込んでしまった。 設定、人物造形、展開、どれも秀逸。
既視感のない傑作。 たくさんの人に読んでもらいたい。 改めて著者の力量に脱帽。
この著者の作品の世界は、どれも好き。 感性の相性がいいのだと思う。
オススメ度:8.7

コメント  津軽百年食堂 (森沢 明夫著、小学館文庫)   作品の紹介 

青森県の弘前で百年続く「大森食堂」。
明治四十二年、大森賢治は、津軽蕎麦の露店を営んでいた。 出汁をとるための
鰯の焼き干しを行商で売るトヨに求婚。 「大森食堂」を開く。
三代目の哲夫は64歳。 大森食堂は、自分の代で終わりかと考えつつも、弘前の
「さくらまつり」に創業百周年を飾る出店をすることを楽しみにしている。
哲夫の息子、陽一は28歳。 東京の大学を卒業し、父の跡を継ぐべく、中華料理店
に就職するも、父を侮辱され、退職。 広告の制作プロダクションに就職するも、
心のバランスを崩し、二年で退職。 得意だったバルーンアートのスキルを生かし、
今はピエロのアルバイトで食いつないでいる。 ある日、イベント会場で知り合った
カメラマンのアシスタントの七海と付き合い始める。 七海も弘前出身で25歳。
バイト生活から抜け出せない陽一とは対照的に七海は師匠から認められ、独立して
フリーのカメラマンになるメドが立つ。 やるせない陽一は、七海と喧嘩し、ひとり
弘前の実家に戻る。 一方、七海は師匠が病に倒れ、仕事をまかされる。 忙しい
日々が続くが、弘前に帰郷し、「さくらまつり」の会場で陽一と再会する、、、。
著者の描く世界は、いつもここちいい。 不器用だけど、まっすぐな心根の人たちが
まわりの人を想い、けんめいに生きていく作品が多い。 登場人物たちに注がれる
著者のあたたかい視線が作品の世界を包み込んでいる。 オススメ度:8.2

コメント  空飛ぶタイヤ(上) (池井戸 潤著、講談社文庫)   作品の紹介 

赤松運送のトレーラーのタイヤが走行中に外れ、タイヤが直撃した主婦が死亡。
トレーラーのメーカー、ホープ自動車は、調査の結果、赤松運送の整備不良との
結論を出す。 赤松運送の社長、赤松徳郎は、納得がいかず、再調査を依頼する
が、ホープ自動車 カスタマー戦略家の課長、沢田は取り合わない。
大手取引先の仕事を打ち切られ、経営危機に陥った赤松は、東京ホープ銀行に
融資を依頼するが、ろくな審査もなく断られる。
やがて、沢田のもとに「週刊潮流」の記者、榎本が訪れ、赤松運送の事故原因は
整備不良ではなく、ホープ自動車の部品が原因であるという内部告発があった
ことを告げる。 沢田は、品質保証部に揺さぶりをかけるが、組織の壁と社内
政治が障害となり、核心に近づけずにいた。
一方、八方ふさがりの赤松に群馬の運送会社、児玉通運の社長が救いの手をさし
のべる。 児玉通運も、ホープ自動車のトレーラーで事故を起こしていた。
児玉は、赤松運送に下請けの仕事を出し、融資してくれるはるな銀行を紹介する。
さらに「週刊潮流」の榎本が赤松のもとを訪れ、事故はホープ自動車の部品に
あったことをにおわせる、、、。
赤松は、ホープ自動車に対し、再調査ではなく、部品返還を求めるが、交渉が
難航する。 沢田は、品質保証部が常務の狩野の指示でリコール隠しをしている
ことを確信し、社長あてに直訴する文書を提出する。 しかし、その文書は狩野
の手に渡り、人事部から沢田の希望する商品開発部への異動を条件に、狩野の軍門
にくだるよう打診される。
経営危機を脱し一息つけるかと思った赤松に対し、事故被害者の夫、柚木が訴訟
を起こす。 沢田は、赤松に対し、一億円の補償金を支払う代わりに、事故部品
の返還をあきらめるよう打診する。
リーダビリティーはあいかわらず高い。 ドライブ感もエンターテインメント性
も人物造形も秀逸。 しかし、リアリティーがあるかと問われたら、少し疑問。
大手企業では、大なり小なりセクショナリズムや社内政治が存在するだろうが、
物語で描かれている悪役たちのレベルが低くて、そんな人物が大手で出世できる?
と突っ込みたくなった。 2018年映画化。 オススメ度:8.2

コメント  空飛ぶタイヤ(下) (池井戸 潤著、講談社文庫)   作品の紹介 

ホープ自動車の沢田は、商品開発部の異動を受け入れるが、異動先で待っていた
のは、飼い殺しの境遇だった。 赤松は、ホープ自動車の和解案を拒否し、事故
部品返還を求める訴訟を起こす。 しかし、期待していた「週刊潮流」のホープ
自動車糾弾の記事は、ホープグループの圧力により、掲載見送りとなる、、、。
赤松は、榎本から譲られたホープ自動車の事故車リストをもとに全国の運送会社
を訪ね歩く。 やがて、ホープ自動車のリコール隠しの証拠をつかみ、警察に資料
を提出。 警察は、ホープ自動車を家宅捜査するが、狩野の指示で不正の証拠は
すべて処分されていた、、、。
そんな中、品質保証部の反狩野派社員から不正の証拠の詰まったPCを預けられて
いた沢田は、そのPCを警察に提出する。 まもなく、ホープ自動車社長と狩野が
逮捕される。 やがて、赤松は、ホープ自動車と和解。 柚木が赤松のもとを
訪れる、、、。
上巻を上回るドライブ感、リーダビリティー。 財閥系メーカーと銀行の強烈な
エリート意識と腐敗ぶりがこれでもかと描かれている。 おもしろかったけど、
一部上場の企業がここまでダメダメなことあるの?と疑問を持った。
オススメ度:8.2

コメント  カエルの楽園 (百田 尚樹著、新潮文庫)   作品の紹介 

ある春の日、平和だったアマガエルの国にダルマガエルの群れが現れる。
アマガエルが次々に食べられていく中、ソクラテスは六十匹の仲間と共に
楽園を求めて旅立つ。 しかし、夏にツチガエルたちの国、ナパージュに
落ち着いた時には、ロベルトとソクラテスの二匹だけになっていた。
崖の上にあるナパージュは「カエルを信じろ、カエルと争うな、争うため
の力を持つな」という「三戒」を守り続け、自分たちの過去の罪を謝罪
する「謝りソング」を歌い続ける国だった。 そして外敵からはスチーム
ボートという鷲が守ってくれる、ソクラテスにとって、平和の国、カエル
の楽園に思えた。
しかし、崖の下に住むウシガエルがナパージュの領地を侵し始める。
元老たちは非戦派と防衛派に分かれて対立する。 非戦派は「三戒」さえ
守っていればウシガエルはナパージュを侵略しない、すべては話し合いで
解決できると主張。 防衛派はスチームボートにウシガエルから守って
ほしいと依頼するが、スチームボートは共にウシガエルと戦うなら協力する
と告げる。 防衛派の元老が非戦派に追い払われているすきに、非戦派の
元老は、スチームボートに、共に戦わないことを告げる。 するとスチーム
ボートはナパージュを去ってしまう。
ほどなくして元老会議に復帰した防衛派は、「三戒」を破棄することを主張。
ナパージュのカエルたちによる国民投票で非戦か防衛か、国の行く末を決する
ことを提案し、採択される。 ウシガエルの侵攻が進む中、国民投票の結果は
僅差で「三戒破棄」の提案が否決される。 その後、ウシガエルの侵攻はナパ
ージュ占領に向けて加速していく、、、。
「三戒」を盲信し、ナパージュは侵略されないという根拠のない自信に満ちた
非戦派の元老をはじめとする国民たちを平和ボケした日本国民が笑うことは
できないだろう。
論客の筆者が日本と日本人の危機管理能力と意識を世に問うたベストセラー。
日本、アメリカ、中国、北朝鮮、韓国の国々をなぞらえた国を描き、憲法九条、
在日米軍、自衛隊、拉致問題、果ては、著者自身もカタチや名前を変えて描か
ている。 最初はシニカルな風刺くらいにしか思わなかったけど、読み進めて
いくうちに非戦を声高に叫ぶカエルたちの狂気がこわくなっていくはず。
考えさせる内容だけど、救いのない話という印象。 オススメ度:8

コメント  ビブリア古書堂の事件手帖 7 (三上 延著、メディアワークス文庫)   作品の紹介 

北鎌倉の古本屋、ビブリア古書堂を舞台にした大人気の古書ミステリー。
シリーズ完結編。 サブタイトルは「栞子さんと果てない舞台」。
太宰治の「晩年」の稀覯本を奪うため、栞子に大けがをおわせた青年、田中からの
依頼で、栞子は、故久我山尚大の妻、真理から買い戻そうとする。
しかし「晩年」は久我山尚大のかつての使用人、吉原喜市の手に渡っていた。
栞子の前に現れた吉原は、田中の祖父から尚大が百万でだまし取った「晩年」を
八百万で譲ると告げる。 栞子は吉原の法外な条件をのむ。 吉原は、去り際、
久我山尚大が栞子の祖父であると言い残す、、、。
尚大の愛人だった栞子の祖母、英子は、三十年近く前に水城禄郎と結婚し、新しい
家庭を築いていた。 吉原の訪問の翌日、水城禄郎が現れる。 水城は、英子が
尚大に返却し、吉原のものになった洋書を、買い戻してほしいと依頼する。
その後、栞子と大輔は、英子に会う。 英子は、初対面ではなく、時々、ビブ
リア古書堂を訪れていた女性だった。 栞子は、英子から義理の息子のことで
吉原から脅迫され、シェイクスピア作品集「ファースト・フォリオ」の複製本を
吉原に渡したと告白する、、、。
栞子は、競り市に出品された「ファースト・フォリオ」の複製本を無事、手に入れる。
その後、吉原は、栞子の母、智恵子と取引のために連絡をとりたい、と告げる。
栞子は、久我山尚大がかつて本物の「ファースト・フォリオ」を手に入れたにも
かかわらず、すぐに売りに出したことを知る。 そして、母、智恵子はその直後、
栞子を置いて家を出ていた、、、。
栞子が「ファースト・フォリオ」の複製本を手に入れた翌日、吉原が栞子のもとを
訪れる。 吉原は、尚大が「ファースト・フォリオ」の複製本を三冊つくったが、
智恵子が跡を継がなかったので、本物と二冊の複製本を売りに出したと明かす。
尚大は、残った複製本を英子に渡し、二十五年後、それを見て本物を売りに出した
と知った智恵子が家を出て、海外に旅立ったという真相が明らかになる。
吉原は、本物の「ファースト・フォリオ」と二冊の複製本を持ってきた。 しかし
その三冊は、店を継がなかった娘、智恵子への復讐のために尚大が糊付けで商品
価値のないものになっていた、、、。
吉原は、この三冊を三日後のオークションに出し、智恵子にもオークションに参加
するよう声をかけていた。 そして栞子にもオークションに参加するよう依頼する。
オークション当日、栞子と母、智恵子の壮絶な競り合いが繰り広げられる、、、。
吉原の悪どさが度を超えていて辟易としたけど、最後にスカッとするどんでん返しが
用意されていて読後感はよかった。 最後まで栞子を振り回した智恵子の提案も粋で
よかった。 シリーズ全体を通して、本のためにそこまでするか?という非常識な人
たちがたくさん出てきて、決して明るい世界観ではなかったけど、栞子の健気さと
大輔のまっすぐさで中和されていたのかもしれない。 そして、著者の膨大な取材と
研究にも感心。  第6作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.3

コメント  吉祥寺の朝日奈くん (中田 永一著、祥伝社文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計5編を収録した恋愛×青春短編集。
甘ったるいラブストーリーではなく、オリジナリティーの高い青春小説。
特に表題作がよかった。 若い人向けの作品なんだけど、さすがは「くちびるに歌を」
の作者。 リーダビリティーも設定もキャラも秀逸。 オススメ度:8.2

コメント  その白さえ嘘だとしても (河野 裕著、新潮文庫)   作品の紹介 

「階段島」シリーズ第二作。
人口2,000人の階段島に暮らす人たちは、自分自身に捨てられた自分。
魔女が島を支配し、失ったものを見つけるまで島から出ていくことはできない。
クリスマスを目前に控え、階段島の住民たちはインターネット通販が使えなくなる。
階段島に来て四か月の高校一年生、七草は、一か月前、島にやってきた幼馴染の
真辺由宇とともに犯人とされるハッカー探しを始める。
七草と真辺のクラスメイト、佐々岡は、中学生の後輩女子、豊川のためにヴァイオ
リンの弦を探し回る。 委員長の水谷は、サンタクロースを装ったストーカーの
捜査を始める。
突然、階段島で七不思議が拡散する中、七草と真辺、同級生、島の住民たちのそれ
ぞれのクリスマスイヴが始まる、、、。
第一作で解き明かされなかった謎解きの続きと思いきや、七不思議のミステリーと
捜査、イヴの準備の話が進んでいく、、、。 しかし、終盤、さくっと階段島の
大きな謎が明かされ、「えっ!?」っていう感じ。
第一作に続いて独特の世界観。 クセになる人が多いのがわかってきた。
第一作「いなくなれ群青」のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  猫と幽霊と日曜日の革命 (河野 裕著、角川文庫)   作品の紹介 

「サクラダリセット」シリーズの第一作。
住民のおよそ半分が何らかの特殊能力を持つ街、咲良田(さくらだ)。
高校一年生の浅井ケイは、一度見聞きしたことを決して忘れない能力を持つ。
同級生の春埼(はるき)美空は、三日間、時を戻す能力「リセット」の持ち主。
二人は強い能力者が集まる、高校の「奉仕クラブ」に所属している。
住民の能力は、管理局によって監視され、高校にも、管理局の局員である津島と
いう教師がいる。 ある日、ケイと春埼は、津島の指示で、村瀬陽香に会う。
村瀬は、昨日の朝、車にはねられて死んでしまった猫を生き返らせてほしいと
依頼する。 ケイは、情報屋の非通知くんから、猫と意識を共有できる能力を
持つ野ノ尾盛夏を紹介され、春埼が「リセット」の能力を使う。
三日前に戻ったケイと春埼は、野ノ尾が意識を共有する、死んだ猫の情報を
得ながら、猫の居場所を探していく。 三日後、ケイと春埼、野ノ尾は、無事
猫を保護する。 しかし、村瀬は宙に浮かび、姿を消す、、、。
その夜、クラスメイトの皆実未来が幽霊になって、ケイと春埼のもとを訪れる。
皆実は、幽霊になる前の記憶を失っていた。 翌朝、ケイは、幽霊の皆実と共
に皆実の身体を探すが、皆実はすでに殺されていた、、、。
ケイは「リセット」のせいで皆実が殺されたのだと自責の念にとらわれる。
二年前、ケイは「リセット」により、一人の少女を死なせていた、、、。
津島からの電話で、ケイは、皆実を殺したのは非通知くんであること、皆実の
能力が幽霊になること、だと知る。 津島は「リセット」すれば管理局が皆実
の命を救うと告げる。 津島との電話の直後、村瀬が現れ、ケイを襲う。
村瀬の能力は触れたものを5分間、消すという強力なものだった。 ケイは春埼
に「リセット」を命じ、難を逃れる、、、。
「リセット」によりそれ以前の記憶を失くした村瀬は、ケイを仲間に誘う。
村瀬は管理局を倒す野望を持っていた。 そして、咲良田を支配することが
できると噂されている「マクガフィン」を手に入れようとしていた、、、。
ケイは、村瀬が管理局を倒すのに手を貸す気はなかったが、いったん返事を
保留にする。 その直後、津島から村瀬の不登校を直す手伝いをしてほしいと
頼まれる。 意を決したケイは、村瀬との対決に挑む、、、。
著者のデビュー作。 デビュー時から独特の世界観を持ったいたのだと改めて感心。
このシリーズは全7巻。 2011年マンガ化。 2017年、実写映画化、アニメ化。
能力に目が行きがちだけど、ミステリーの要素も秀逸。 オススメ度:8.3

コメント  総力捜査 (安東 能明著、新潮文庫)   作品の紹介 

「柴崎警部シリーズ」の第五作。 表題作を含む計五編を収録。
柴崎が綾瀬署に着任して一年半が過ぎた四月、刑事課の課長代理として上河内が
異動してきた。 上河内は警視庁本庁の捜査一課、二課で活躍したやり手の刑事。
資産家の次男でおしゃれな上河内は、たびたび柴崎に捜査協力を依頼。 柴崎も
忙しいと言いながら、いつのまにか上河内のペースに乗せられている。 さらに
柴崎と親しい刑事課の女性、高野もチームに加わり、次々と事件を解決していく。
派手さはないけど、安定感のあるシリーズ。 本作は柴崎と上河内の巻。
シリーズ第四作「広域指定」のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.1

コメント  教場2 (長岡 弘樹著、小学館文庫)   作品の紹介 

警察学校を舞台にしたベストセラーのミステリー「教場」の第二作。
計6話を収録した連作短編集。
第一作同様、安定したクオリティー。 前半三編は警察学校を退校させられる
学生の話。 後半三編は打って変わって警察官の未来に期待したくなる学生の
努力する姿を描いている。 ミステリー部分もさることながら、このシリーズは
これまでほとんど知ることのなかった警察学校のディテールを描写している点が
興味深い。 警察官は、さまざまな経歴を持つ転職組が意外と多いことに驚く
読者がほとんどだと思う。 第一作とともに2020年スペシャルドラマ化。
第一作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.1

コメント  赤い刻印 (長岡 弘樹著、双葉文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計4編を収録した短編集。
「日本推理作家協会賞」短編部門受賞作「傍聞き」の主人公の母娘が再び登場。
まさにミステリー短編の名手というクオリティーなんだけど、どの話も灰色の
風景で、あまり救いのないお話。 オススメ度:8

コメント  名前探しの放課後(上) (辻村 深月著、講談社文庫)   作品の紹介 

高校一年の依田いつかは、ある日、三か月前にタイムスリップする。
高校の同級生がクリスマスイブに自殺する記憶は残っているものの、それが
誰かは思い出せずにいた。
いつかは、未来に戻ることやタイムスリップの理由の解明には目もくれず、
同級生の自殺阻止を最優先することに決める。
最初に、中学からの同級生で、タイムスリップに詳しい坂崎あすなにタイム
スリップしたことを告白。 同級生の自殺を防ぐ協力を依頼する。
いつかは、さらに親友の秀人、秀人の彼女、椿、そして、天才の呼び声が高い
天木にも事情を話し、自殺する予定の生徒探しへの協力を得る。
やがて、秀人が、同じ陸上部のハルがハジメという生徒をいじめていること
を知る。 そして、その直後、あすなが、偶然、河野基(はじめ)という生徒
のノートに遺書らしき記述があるのを見る。
いつかとあすなたちは、河野が自殺する生徒ではないかと考える。
そんな矢先、河野がハルたちに体育館の倉庫に閉じ込められ、いつかたち5人に
救出される。 河野は、自分のノートが見られたことを見抜くが、自殺する気
があるのではなく、遺書を書くのが趣味だと告げる。
河野がいじめられるきっかけとなったのが、水泳のおかしなフォームだと知った
天木は、元水泳部のいつかに河野のコーチを依頼する。 かくして、いつかは、
河野の水泳のコーチに就任。 やがて、あすなもいつかにコーチを依頼する。
学園ミステリーに独自の作風を持つ著者の世界観を満喫できる作品。
いつかとあすなたち5人のキャラづくりも秀逸。 話のテンポが少しだけゆっくり
なのは気になるけど、読者に自然に推理させながら、後半に期待を持たせる構成
はおみごと。 オススメ度:8.2

コメント  名前探しの放課後(下) (辻村 深月著、講談社文庫)   作品の紹介 

水泳の練習を通して、河野は徐々にいつかたち5人と打ち解けていく。
しかし、河野は、またもやハルに暴力を振るわれ、金を巻き上げられる。
いつかは、思い出せなかった自殺者が河野であることを思い出す、、、。
いつかは、自分が通っていたスイミングスクールの昇級テストに河野とあすか
をエントリー。 河野は50メートル、あすかは25メートルを泳ぎ切る。
ハルは、天木に、河野が泳ぐ場に連れてこられ、河野へのいじめをやめること、
河野に金を返すことを約束する。
あすなの祖父が経営するレストランがタウン誌の取材を受けることになり、
あすなの祖父は、いつかたちのクリスマスパーティーを開くことを提案する。
いつかたちは、クリスマスイブのパーティーに河野を参加させることにより、
その日に予定されている彼の自殺を防げるのではないかと考える。
ところが、12月22日、またもや、河野がハルから金を巻き上げられる、、、。
ハルの要求を断れない河野に腹を立てたいつかは、河野に2日後に自殺する未来
を話してしまう。 興奮する河野に、天木が冷静にいつかのタイムスリップの
顛末を打ち明ける、、、。 河野は勇気を出してハルに金を返すように要求、
金は返してもらえず、暴力を振るわれるが、クリスマスパーティーに参加する。
そして、運命のクリスマスイブの夜が更けていく、、、、、、。
物語が終わったかと思ったら、まさかのどんでん返し。 河野の自殺を食い止めて
終わりではないと思っていたけど、大掛かりな仕掛けが明かされる。
そして、ラストで明らかになるいつかのタイムスリップの謎に二度びっくり。
登場人物たちが著者の他の作品とここまでリンクしていたとは、、、。
でも、ハッピーエンドだし、どんでん返しに拍手する読者も多いのでは?
青春ものとしても、ミステリーとしても、ラブストーリーとしても一級品。
上下巻あわせて850ページを超える大作。 オススメ度:8.3

コメント  遠まわりする雛 (米澤 穂信著、角川文庫)   作品の紹介 

「氷菓」に始まる「古典部シリーズ」の第四作。 表題作を含む計七編を収録。
同じ中学出身の三人、折木奉太郎、福部里志、伊原摩耶花と千反田えるの一年生
四人で構成される神山高校 古典部が舞台。
今回は、古典部のメンバーの高校入学からの一年を描いた短編集。
えるの疑問を奉太郎が紐解く。 摩耶花の好意にとまどう里志。
「古典部シリーズ」好きの読者には、うれしい一冊でしょう。 長編では描かれ
なかった四人の心のうちがさりげなく書かれているのもいい。
シリーズ第二作「愚者のエンドロール」のブックレビューはこちら
オススメ度:8

コメント  ユリゴコロ (沼田 まほかる著、双葉文庫)   作品の紹介 

小さなドッグラン付きの喫茶店を経営する亮介。 婚約者の千絵が失踪、父が末期ガンを
宣告され、母は交通事故死する。
亮は4歳のとき、長期入院し、退院、引っ越しと続く中で、母親が別人に入れ替わったの
ではないかという疑念をずっと持ち続けていた。
ある日、亮介は、父の部屋の押入れで「ユリゴコロ」というタイトルの4冊のノートを
見つける。 そこに書かれていたのは、一人の女性の連続殺人の告白だった。
「ユリゴコロ」を書いた女性は、小学校のときに同級生を見殺しにしたことに始まり、
中学生のときに少年を救助中の青年の作業を阻害し少年を殺してしまう。 そして、
高校を卒業し、専門学校生のときは、自分の手で、親友と親友に目をつけていた男の命を
奪う。 社会人になるものの、わずか一年で失業。 娼婦として生きながらえるなか、
会社員時代の上司を殺害。 しかし、その後、中学生の時に間接的に殺害した少年を救助
しようとした青年と出会う。 やがて誰が父親かわからない子どもを妊娠するが、その
青年からプロポーズされる。 二人は結婚し、男の子が生まれるが、、、。
亮介は「ユリゴコロ」のノートを途中まで読み、手記を書いた女性が自分の母ではないか
という疑念を抱き始める。 弟の洋平の力を借りながら母の過去を調べていく。
やがて、亮介が「ユリゴコロ」のノートを2冊目まで読み、3冊目を持ち出したことに気づ
いた父は、亮介に最後の一冊を読ませ、真実を語り始める、、、。
一方、失踪中だった千絵も、亮介の喫茶店の店員の細谷という女性の献身的な協力で亮介
のもとに戻る。 しかし、千絵は人妻であり、やくざに借金をつくった夫に心身ともに
深く傷つけられ、茫然自失の状態だった。 やがて、千絵の夫が千絵の居場所を突き止め
金を強請ろうとする、、、。
そして、物語は、終盤に向けて、三連続の驚愕の真実で締めくくられる。
「ユリゴコロ」を書いた、殺人に憑りつかれた女性。 そして、その女性を憑りつかれた
ように愛する男性。 なんとも言えない人物造形とダークな展開。 独特の世界観の描写
と構成が秀逸。 「ユリゴコロ」の中の物語と亮平の現実のクロスも絶妙。
久々にドキドキしながらページをめくる作品に出会えた感じ。 救いのない話に思えるけど
ハッピーエンドかなとも思った。 今までに読んだ著者の作品の中ではベスト。
2012年「大藪春彦賞」受賞、「本屋大賞」6位。 オススメ度:8.4

コメント  ヤッさんV (原 宏一著、双葉文庫)   作品の紹介 

宿なしだが、食のスーパーコーディネーター「ヤッさん」を主人公に築地市場を
舞台にしたシリーズ第三作。 サブタイトルは「築地の門出」。 計6編を収録。
ヤッさんの弟子だったタカオは、蕎麦職人をめざす妻、ミサキとともに蕎麦屋で
働いていたが、ミサキが蕎麦の栽培から経験したいと農家に住み込みで働くこと
になる。 タカオは店の経営を学ぶため、ホテルへの就職を考えるが、ヤッさん
の助手として再スタートを切る。 折しも、築地市場は、豊洲への移転で混乱の
真っ只中。 ヤッさんとタカオは、移転に翻弄される仲買人、鮨職人、料理人
たちのために奔走する、、、。
やがて、タカオとミサキは築地場外に自分たちの店を持つ計画を進める。
しかし、プロでないと出入りできないという豊洲市場のルールを知ったヤッさん
は、突然、引退を宣言する、、、。
豊洲移転が決まったあとの築地で働く人々の悲哀や矜持、再出発を描いた佳作。
なんだかものすごくリアルに感じられるエピソードが満載。 第一作、第二作
とは打って変わって、物語後半のヤッさんの迷走ぶりも見もの。
第二作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  東京ポロロッカ (原 宏一著、光文社文庫)   作品の紹介 

7編を収録した連作短編集。 舞台は多摩川沿いの街。
アマゾン川が逆流し、5m以上の高波が押し寄せる「ポロロッカ現象」が多摩川で起こる
という噂が流れる。 多摩川沿いの大田区、世田谷区、川崎、調布で暮らす人々が「ポロ
ロッカ現象」の噂が広まる中、悩んだり、騙されたり、奮起したりする姿を描いた作品。
各話の主人公は、零細工場の経営者、バツイチの家政婦、小二の子どもをかかえるシン
グルマザー、中小企業の気象予報士、カフェのオーナーなどさまざま。
「ポロロッカ現象」は、作品の味付けとして、各話のブリッジのように使われているが、
話の中心は、転機を迎えた人たちの人生ドラマ。 オススメ度:8.1

コメント  極楽カンパニー (原 宏一著、集英社文庫)   作品の紹介 

東京郊外のニュータウンの団地で暮らす須河内と桐峰は定年後の時間を持て余して
いた。 意気投合した二人は会社ごっこを始め、「株式会社ごっこ」を設立。
地元で社員を募集したところ100人近くが入社。 新たに「株式会社得意先」を
設立。 須河内が「株式会社ごっこ」、桐峰が「株式会社得意先」の社長となり
喫茶店と雀荘をオフィスにして、人、モノ、金、情報のうち、人と情報の二つの
要素に特化した架空の業務を開始する。
さらに噂が噂を呼んで「株式会社ごっこ」は三つの支社を開設。 須河内の息子、
慎平の婚約者、春川真弓がマーケッターの仕事を生かしてサポートする。
これに対抗するように「株式会社得意先」も支社を開設。 さらに神奈川にも
支社を開設。 千葉では須河内たちの動きをまねた同様の企業が設立される。
須河内たちのフェイク会社は、倒産寸前の飲食店やコンビニなどをオフィスにして、
拡大していく。 商社を辞めて独立を模索していた慎平はフェイク会社のフランチャ
イズ化を思い立ち、元得意先の社長、二谷から資金援助の約束を引き出す。
「株式会社ごっこ」は11、「株式会社得意先」も8の支社を開設。 千葉以外にも
宇都宮、前橋、水戸、小田原と同様の企業が次々に開設されていく。
しかし、須河内は慎平の構想を拒絶。 それでも慎平は会社を辞める。
定年退職者のバーチャルカンパニーは、北海道、関西、九州への広がりを見せる。
須河内の妻、恵美子は、慎平に「人と情報は定年後の世代が、モノと金は若者が
担当する本物の会社をつくったらどうか」と提案する。
母親のアイデアをヒントに、慎平は、資金調達と物流を若者世代が受け持つビジネス
モデルを模索し始める。 そんな矢先、二谷社長と桐峰が裏で手を組み、慎平が当初
考えていたフェイク会社のフランチャイズ事業を慎平に無断でスタートさせる。
やがて、売り上げ不振に悩む、フェイク会社のオフィス提供希望者たちから集めた金、
55億円を持って二谷と桐峰が姿を消す、、、。
一見なさそう。 でも、もしかしたら「あるかも?」と思わせるさじ加減が秀逸。
著者の作品は「フィクション」の設定のおもしろさを追求したものが多いと思う。
定年後のサラリーマンを斬新な切り口で料理した作品。 発想が新鮮。
オススメ度:8

コメント   (原 宏一著、実業之日本社文庫)   作品の紹介 

富士の青木ヶ原の樹海で共同生活を送る男女4人の物語。
会社を辞めざるを得なくなり、独立するも失敗、離婚して、自殺しようと樹海に
やってきたカズヒロ、32歳。 地震で自殺に失敗。 ロクさんと名乗る老人に
助けられ、洞窟で自給自足の共同生活を始める。 やがて、政治家の秘書で献金
疑惑の罪を押し付けられた中年、コタニが仲間に加わる。 さらに玉の輿結婚に
失敗した26歳のタツコもやってくる。
世直しを夢見るロクさん、ロクさんに心酔するタツヒコ、自分を嵌めた政治家に
復讐を誓うコタニ、社会復帰の機会を窺うタツコ。 それぞれの思惑を胸に抱き
ながらも共同生活は一見平和に過ぎていった、、、。
しかし、洞窟の奥でレアメタル、さらにはウランまで見つかり、タツヒコ、コタニ、
タツコは一攫千金、社会復帰を企てる。 タツコの依頼でカズヒロがタツコの元カレ
で鉱物に詳しい宮田に会いに行く。 タツコをまだ愛している宮田はタツヒコの案内
で樹海を訪れる。 宮田の鑑定でレアメタルやウランの鉱脈が大きいとわかり、ロク
さんは突然、新国家をつくると言い始める、、、。
レアメタルの採掘権を売却すべく、宮田とコタニがそれぞれの人脈を頼りに東京に
出かけるが、、、。
いつもながら設定がひとあじ違った著者のふしぎテイスト満載の作品。 荒唐無稽
とも言い切れない、樹海の自給自足生活という舞台設定が絶妙。
4人の共同生活の行く末が気になり、どんどん読み進めた。 リーダビリティーも
高め。 ラストはちょっとせつなかったかな。 オススメ度:8.1

コメント  水族館ガール 3 (木宮 条太郎著、実業之日本社文庫)   作品の紹介 

水族館のイルカトレーナーの女性を描く人気のシリーズ第三作。
千葉のアクアパークのイルカトレーナーの嶋由香は、大阪の海遊ミュージアムへ出向中
の恋人、梶良平の帰りを待ちわびていた。 しかし、梶は、アクアパークの内海館長から
新プロジェクト担当の特命を受け、そのまま長期出張というかたちで海遊ミュージアムで
働き続けることになる。
一方、由香もアクアパークの新プロジェクトリーダーとなり、「海洋学国際シンポジウム」
に出席。 由香は、この出張を通して、研究者の沖田や、沖田の友人の黒岩から、飼育
海獣を擬人化することなく接することの難しさ、たいせつさを学ぶ。
その後、由香は、ラッコ担当のピンチヒッターやマンボウ飼育のサポートなど、次々と
新しい経験を積み、アクアパークが一歩前に踏み出すためのプロジェクトも成功させる。
そして、梶は、内海館長とともに、アクアパーク生き残りのために、民間企業からの出資
を成功させる、、、。
今回は、イルカのお話はお休み。 けど、イルカ抜きでも読み応え十分。
単なるラブコメ、お仕事小説ではなく、第二作以降、水族館のあり方、経営の難しさ、
飼育者や研究者の生きざまを描くスケールの大きな物語になっていると思う。
第二作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.3

コメント  なにかのご縁 (野崎 まど著、メディアワークス文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「ゆかりくん、白いうさぎと縁を見る」。 計4話を収録。
珠山大学の自治会で忙しく働く学生、波多野ゆかり。 ある日、彼はキャンパスで長くて白い
ひもを見つける。 そのひもは森の中まで続いており、人間のことばを話す白いうさぎに出会う。
そのうさぎは、人の縁のひもを結んだり、切ったりできるという。 ふつうは見えない縁のひも
を見ることのできるゆかりも、縁を見る力があることがわかる。
そして、ゆかりとうさぎは、恋人、親友、家族の縁を紡いでいく、、、。
一見、肩のこらないライトなお話かなと思って読み始めたけど、「know」、「2」、「アムリタ」
など独自の世界観の凝った話を連発した著者の作品だけにちょっと身構えて期待して読み始めた。
けれど、最初の印象通り、肩のこらないライトなお話のままで終わった。
ローティーン向けの作品だったのか??? オススメ度:7.8

コメント  校閲ガール ア・ラ・モード (宮木 あや子著、角川文庫)   作品の紹介 

シリーズ第2作。 計5編+番外編を収録。
学生のころから愛読していたファッション雑誌編集者を夢見て、難関の入社試験
を突破し総合出版社、景凡社に就職した河野悦子。
しかし、希望とは正反対の校閲部に配属され、文芸の担当となり2年目。
「(校閲部だから)オシャレしてても無駄で可哀想」、略して「オシャカワ」と
いうありがたくないあだ名で呼ばれている。
本巻の各話は「校閲ガールのまわりの〇〇」というタイトル。 悦子の勤める
出版社の同期、先輩、上司を中心に描いている。
各話に悦子は登場するものの、出番は少ない。 しかし、各話の主人公を通して
悦子の存在感を浮き彫りにする演出は秀逸。
シリーズ第1作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2

コメント  校閲ガール トルネード (宮木 あや子著、角川文庫)   作品の紹介 

シリーズ第3作。
悦子は、作家でモデルの是永からゴールデンウィークの軽井沢に誘われる。
二泊三日の二人きりのお泊りデートのはずが、軽井沢には同期の森尾や編集
の貝塚など景凡社のメンバーがいた。 パーティーに誘われたり、作家の家
に招待されたりで、二人だけの時間が持てなかったが、、、。
GW後、悦子に突然、異動の辞令が出る。 行き先は悦子の憧れ続けた女性誌
「Lassy」の結婚情報に特化した季刊増刊「Lassy noces」編集部。 しかし
悦子の異動は、常勤の外部ライターが一年、産休・育休をとる間の臨時雇い
扱いだった。 しかも「Lassy noces」編集部は、外注に頼らない自前主義。
悦子は、教育係の綿貫に鍛えながら、懸命に働くが、文章を校閲できても、
書くことは苦手のままだった。 やがて、育休中のライターが半年で復帰、
悦子も予定より半年早く校閲部に戻る。 しかし、綿貫も悦子と同時に校閲
部に異動する、、、。
やがて、是永は専属モデルの仕事が入り、イタリアに旅立つことになる。
是永は悦子に「いっしょに来てほしい」と告げるが、悦子は断る、、、。
悦子は校閲部で生きていこうと決意する。 やりたい仕事は「Lassy」編集
だったが、向いてる仕事は校閲だったと気づいたから、、、。
物語終盤で出てくる、悦子が自分のことを編集者ではなく「プロ読者」だと
気づくくだりが潔かった。 続編があるかどうかわからないけど、期待以上
のシリーズだった。 一見、オシャレ好きの女子のライトなお仕事小説に
思われがちだけど、エンターテインメントの部分と仕事に向き合う悦子の
真摯さが両立していてよかった。 オススメ度:8.2

コメント  フラガール (白石 まみ著、メディアファクトリー)   作品の紹介 

昭和40年、炭鉱の町、福島県磐城市が舞台のお話。
常磐炭鉱で人員削減が続く中、常磐ハワイアンセンター建設に伴い、ハワイアンダンサーの
募集が始まる。 炭鉱で働く一家で育った、親友同士の紀美子と早苗は、ダンサーに応募。
しかし、説明会に集まった女性たちは、フラダンスの映像を見せられて次々に退席する。
残ったのは、紀美子と早苗、子持ちの初子、大柄な小百合の四人だけだった。
まもなく東京からフラガールの講師、平山まどかが到着。 かくして「常磐音楽舞踏学院」で
四人の女性を相手にまどかのレッスンが始まる。
四人が少しずつ上達し始めたころ、炭鉱閉鎖が決まり、ダンサー希望者は20人近くに増える。
ところが、常磐炭鉱を解雇された早苗の父が夕張炭鉱で働くことになり、早苗は家族と共に
常磐を去る、、、。
紀美子たちダンサーは、ハワイアンセンターのオープンを前に、北海道から沖縄まで、バスで
70か所をまわるプロモーションの旅に出る。 ツアーを通し、ダンサーたちに度胸がつき、
チームワーク、プロ意識も向上していく。 キャラバン最後の日、ステージを前に常磐炭鉱の
落盤事故の知らせが入る。 まどかは「帰っていい」と告げるが、紀美子は「踊っぺ!」と
声をあげステージをつとめる。 炭鉱では小百合の父が娘の到着を待てずに息を引き取っていた。
常磐に戻ったまどかは、炭鉱の人たちから非難される。 意を決したまどかは「東京に帰るが、
娘たちの晴れ姿を見てやってほしい」と告げ、炭鉱を去る決意をする。
紀美子の母をはじめ炭鉱の住民たちが少しずつハワイアンセンターに理解を示し始め、ついに
フラガールたちのデビューの日がやってくる、、、。
2006年映画化。 「日本アカデミー賞」最優秀作品賞受賞。 映画の脚本を小説化した作品。
200ページにまとめているが、ストーリー中心の構成。 映画はフラダンスのシーンがふんだん
に盛り込まれていたので、映画で感動した身としては、物足りなさを感じるのはしかたのない
ことか。 オススメ度:8

コメント  熱球 (重松 清著、新潮文庫)   作品の紹介 

東京の出版社を退職し、小学5年生の娘、美奈子とともに故郷の山口に戻った38歳
の洋司。 妻の和美はアメリカに留学中の大学教員。 実家で67歳の父との同居が
始まる。 洋司は、20年前の夏の甲子園予選で幸運に恵まれ決勝まで進むが、部員
のオサムの傷害事件により決勝戦を辞退する。 マネージャーの恭子はオサムの子
を妊娠していた。 その後、オサムはバイクで事故死。 洋司は故郷の苦い思い出
を振り切るように東京の大学に進んだ、、、。
娘の美奈子が学校でいじめられ、むしゃくしゃした気持ちを落ち着かせるため、洋司
は母校を訪れる。 グラウンドでは、母校の教員となった同級生、神野が監督をつと
めていた。 洋司もコーチとして野球部の練習を手伝うようになるが、現役部員たち
の情熱のなさに閉口する。 再会したもう一人の野球部の仲間、亀山は脱サラして
洋食屋を始めるが、全くうまくいっていなかった。 その後、美奈子の授業参観の日、
マネージャーだった恭子に再会。 シングルマザーの恭子の息子、甲太の野球の指導
を始める。 洋司が仕事を探すこともなく日々が過ぎていく中、神野は妻との関係が
うまくいかなくなり、亀山の店が窮地に立たされる。 そして、甲太のめんどうを
見るうち、洋司と恭子の仲を疑う噂も流れ始める、、、。
洋司が故郷に戻って半年後、母の一周忌に合わせて一時帰国した妻、和美の前で、
洋司の父は「一人暮らしでもだいじょうぶ」と宣言。 洋司も出版社時代の先輩に
誘われた仕事をするために東京に戻る決意をする、、、。
38歳にして仕事を辞めた男が、妻の留学もあり、娘とともに故郷で人生を見つめ直す
話を筆者独特のあたたかくやさしい視点で描いている。 故郷で苦労しながらも懸命
に生きる同級生たち。 学校でいじめに会いながらも、母に心配をかけまいとプラ
イドを賭けて立ち向かう娘。 故郷に苦い思い出を残してきた洋司。 故郷は美化
された思い出いっぱいの場所ではなく、同級生たちのリアルにも心が痛む。 しかし
再就職もしないまま半年を過ごした主人公には必要な時間だったのかもしれない。
ぜいたくな時間だと思う人が多いだろうけど。 オススメ度:8

コメント  向田理髪店 (奥田 英朗著、光文社文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計6編を収録した連作短編集。
かつては炭鉱で栄えたが、すっかり寂れ、高齢化が進む財政破綻の町、北海道苫沢町。
二十八歳で父の跡を継いで理髪店の店主となった向田康彦、五十三歳。
七十九歳の母、富子と妻、恭子三人で暮らしていたが、札幌で就職したばかりの
長男、和昌が跡を継ぐと言って帰郷する、、、。
康彦と家族を取り巻く町の人々の喜び、希望、嘆き、不安を描いた佳作。
町を再生させようと必死に取り組む青年部の熱意。 東京で働く地元出身者が抱える
高齢者の父の介護、看護。 農家の四十歳の息子の中国人との結婚。 地元出身の
四十二歳の女性が突然開いたスナックで繰り広げられる恋のさや当て。 苫沢初の
映画ロケをめぐる小さな諍い。 そして地元出身の若者が東京で犯した犯罪。
町に将来性はないけれど、町民たちは常に刺激を求めていて、心の中には小さな希望
の灯が揺らめいている。 何も秘密を持てない、小さな町の、都会の人たちからは
考えられない日常をていねいに描いている。 オススメ度:8.2

コメント  田舎の紳士服店のモデルの妻 (宮下 奈都著、文春文庫)   作品の紹介 

竜胆梨々子は同じ会社の達郎と四年前に結婚。 潤、歩人という二人の子どもにも
恵まれ、幸せな母、妻だった。 しかし、達郎がうつ病を発症。 梨々子は達郎の
故郷で暮らすことに。 結婚して15kg太り、表情が無くなった夫。 まったくなじみ
のない北陸の地で梨々子の三十代が始まる、、、。
物語は六章だて。 第一章が「0年」、第二章が「2年」と続き、最終章が「10年」。
第一章が30歳、第二章が32歳、そして最終章が40歳の梨々子を描いている。
各章とも、梨々子の誕生日近辺のできごとがていねいに綴られている。
義父の会社で働く夫。 うつ病の薬は飲み続けている。 結婚前の輝きはもうないが、
地元の紳士服店のモデルをつとめている。
無口な息子たち。 潤はやさしい心根でピアノの才能が開花していく。 歩人は
知的障がいのようだが、友だちができる。 そして、梨々子は地元出身の元アイドル
と知り合い、淡い恋心を抱く、、、。
夫のうつ病発症とともに、世界が変わってしまう女性の孤独感や自分探し、葛藤、
希望を丹念に描いた佳作。 オススメ度:8

コメント  太陽のパスタ、豆のスープ (宮下 奈都著、集英社文庫)   作品の紹介 

結婚式の二か月前に婚約を解消された明日羽。 傷心の彼女に叔母のロッカさんが提案
したのは「やりたいことリスト」の作成だった。 明日羽は「きれいになる」、「毎日
鍋を使う」、「ぱーっと旅行する」「玉の輿に乗る」という項目を次々に書き出していく。
実家を出て一人暮らしを始めた明日羽を、近所に住むロッカさん、男性として生まれながら
女性として生きる幼馴染の京、会社の同僚の郁ちゃん、そして両親と兄が支えてくれる。
婚約解消の痛手から立ち直り、一週間の休暇をとった明日羽は、郁ちゃんとともにフリー
マーケットで豆と豆料理を販売することを始める、、、。
20代半ばを過ぎた、自分に自信を持てない明日羽の心の成長の物語。 周りに愛されて
いることに気づき、感謝し、前を向いて生きていくことのたいせつさを描いたあたたかい
お話。 ロッカさん、京をはじめ、登場人物のキャラクター設定がよかった。
オススメ度:8.1

コメント  星と輝き花と咲き (松井 今朝子著、講談社文庫)   作品の紹介 

明治八年、大阪で生まれた園は、六歳の時、叔母の勝の養女となる。 近所の老人の
手ほどきをうけ、園の浄瑠璃の才能が開花。
十一歳の時、勝とともに東京見物のために上京した園の浄瑠璃は瞬く間に評判になる。
園は、竹本綾之助と名乗り、近久という五厘(マネージャー)を得て、異例のはやさで
真打として高座に上がる。
綾之助は、まもなく、女義太夫の頂点を極め、十年以上も人気を博す。 やがて、石井
健太という慶應の学生に恋をする、、、。
石井は勝に綾之助との結婚を申し出るが、勝は許しを出さなかった。 しかし、ほど
なく卒中であっけなくこの世を去る。 その直後、妊娠が発覚し、綾之助は引退を
決意する、、、。
追っかけまで生んだ元祖アイドルのお話。 けれども、歴史小説の巧者である著者の
手にかかると骨太の作品に仕上がるのはさすが。 オススメ度:8.2

コメント  為吉 (宇江佐 真理著、実業之日本社文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「北町奉行所ものがたり」。 六編を収録した連作短編集。
呉服屋の息子として生まれた為吉は五歳のとき、押し込み強盗に両親を殺される。
叔母の家に引き取られるが、叔母の夫と折り合いが悪く、十二の時に与力の下男
となる。 そして、十八で北町奉行所の中間となって五年。 両親を殺した盗賊
の首領が捕まる。 やがて、同心の坪内の計らいで岡っ引きの田蔵の娘、おくみ
と所帯を持ち、田蔵のもとで下っ引きとして働き始める、、、。
為吉の話以外に、五人を殺した十八の旅籠の男衆の話、同心見習いとなった十四
の少年の話、まっすぐな正義感で奉行所の腐敗に目を配る同心の話、許嫁とは別
の男と所帯を持った与力の妻の話などが語られる。
為吉の話で始まり、終わる構成であるが、間に北町奉行所に縁のある人々の話が
挿入されている構成。 一風変わった構成だけど、為吉以外の話もメリハリが
きいていてよかった。 オススメ度:8.1

コメント  閻魔の世直し (西條 奈加著、新潮文庫)   作品の紹介 

サブタイトルは「善人長屋」。 シリーズ第二作。
深川の「千七長屋」は「善人長屋」と呼ばれているが、差配で質屋の儀右衛門、
髪結い床の亭主、半造はじめ、裏稼業を営む住人ばかり。
香具師の元締め、大盗賊の頭、掏摸の元締めと、裏社会の三人の大物が次々と
襲われ、大勢の死者を出す。 犯人は「閻魔組」と名乗る三人の若い侍。
「閻魔組」は読売に犯行声明を出し、さらに四件の犯行を重ねる。
江戸の町人たちは「閻魔組」に喝采を送る。 「善人長屋」を時々訪れるように
なった南町奉行所の同心見習い、白坂長門も、儀右衛門の娘、お縫に「閻魔組」
を肯定するような言葉を漏らす。
「閻魔組」は、南町奉行所の与力と同心を惨殺し、続けて、商家にも押し入る。
儀右衛門は、長屋の仲間たちとともに「閻魔組」の正体を探り、ついに三人の
うちの一人を突き止める。 そして、白坂長門も「閻魔組」の一員ではないか
と疑念を持ち始める。 一方、お縫は白坂に惹かれていく、、、。
やがて、「閻魔組」の黒幕が盗賊の夜叉坊主であることを突き止めた儀右衛門は
夜叉坊主と閻魔組を亡き者にする計画を立てる、、、、、、。
さまざまな趣向の時代小説を送り出す、引き出しの多い著者の佳作。
「閻魔組」の正体をめぐる終盤のどんでん返しも秀逸。 とはいえ、せつない
結末。 オススメ度:8.1

コメント  引っ越し大名三千里 (土橋 章宏著、ハルキ文庫)   作品の紹介 

江戸時代前半のお話。 七歳で藩主を継いだ松平直矩は、人生で七度、藩主として
五度の国替えを経験した「引っ越し大名」。 物語は1682年、直矩四十歳のときに
人生で五度目、藩主として三度目の国替えを命じられたところから始まる。
越後高田藩のお家騒動の仲裁に入ったばかりに、五代将軍 綱吉の怒りを買い、播磨
姫路藩 十五万石から豊後日田藩 七万石に減封となった直矩。 これまで藩の国替え
をみごとにさばいてきた家臣、板倉は亡くなったばかり。 直矩も、江戸家老も、
国替えの差配を国家老、本村に丸投げする、、、。
国元、播磨では、やっかいごとを避けたい家臣たちが、書庫係で引きこもり侍の片桐
春之助に「引っ越し奉行」の役目を押し付ける。
春之助は、先代の引っ越し担当、板倉の娘、於蘭を訪ね、様々な教示を受ける。
幼馴染で兄貴分の鷹村の助けも借りながら、徐々に引っ越し奉行らしく成長していく。
春之助は、無事、日田への引っ越しを成功させ、於蘭と夫婦になり、男の子を授かる。
しかし、わずか四年後、出羽山形藩への国替え、さらに六年後、陸奥白河藩への国替え
を取り仕切ることになる。 石高も姫路藩時代の十五万石に戻り、春之助は、次なる
引っ越しの準備ではなく、引っ越ししなくてもよい戦略に方向転換する。
二年後、またしても国替えの危機が訪れるが、、、。
ちょっと変わった歴史小説。 何よりテーマがユニーク。 リーダビリティーの高い
春之助の成長物語。 2019年映画化。 オススメ度:8.1

コメント  荀ケ (風野 真知雄著、PHP文庫)   作品の紹介 

「三国志」の主役のひとり、曹操を支えた天才軍師、荀ケ(じゅんいく)の物語。
若き日の荀ケは、都、洛陽で曹操と知り合う。 官吏となるが、霊帝が崩御。
政局が不安定になった混乱の中、董卓が権力を握る。 これに対し、曹操、袁紹、
袁術、孫堅らは反董卓軍を結成するが、成果をあげられずにいた。
やがて、袁紹は、名家の出で天才の呼び声高い荀ケを招き、参謀とする。
袁紹は、公孫讃、劉備の軍と戦う。 袁紹は勝利するが、荀ケは、袁紹のもとを
去る。 ほどなく、荀ケは、曹操のもとを訪れ、司馬となる。
董卓は、王允の命を受けた呂布に討たれる。 曹操は、荀ケの策により黄巾族軍
三十万を麾下に収める。 曹操は、徐州に進軍し、留守を荀ケにまかせる。
そこに呂布が攻めてくるが、荀ケが夏侯惇とともに防戦。 曹操が戻り、呂布の
攻撃を食い止める。 徐州の牧、陶謙が亡くなり、劉備があとをまかされる。
呂布は、曹操の制圧をあきらめ、徐州に向かう。 荀ケの勧めに従い、曹操は
帝を迎え入れる。 やがて、呂布に敗れた劉備が曹操のもとに参じる。
曹操は、呂布を討つ。 荀ケは劉備の台頭を危惧し、暗殺を進言するが、曹操は
取り合わなかった。
やがて、劉備は曹操を裏切り、徐州を制圧。 袁紹の配下に入る。
曹操は劉備を攻め、勝利。 関羽を捕虜とする。 まもなく、曹操と袁紹の戦い
が始まる。 緒戦で関羽は、袁紹軍の中心、顔良を討ち、劉備のもとに戻る。
荀ケは、呉の孫策に刺客を放ち、暗殺する。
最大の敵、袁紹との決戦に備え、荀ケは参謀の切り崩しにかかる。 曹操に投降
した参謀の情報により袁紹軍の食糧庫を焼き払い、陽動作戦で袁紹軍に勝利する。
翌年、袁紹が病死し、三男の袁尚が跡を継ぐ。 しかし、袁家は内部分裂、袁尚
は、逃亡先で捕らえられ、討たれる。
丞相となった曹操は、荊州を落とすが、孫権と劉備の連合軍に赤壁で敗れる。
曹操は、再び孫権を攻める。 荀ケも戦地に向かうが、途中で倒れる、、、。
「三国志」を曹操と荀ケの視点から描いた物語。 地位も富も求めず、平和を
願う荀ケの思い、そんな荀ケを頼りにし、敬意を払う曹操の心が語られている。
「三国志」を知る人には直球のお話か。 とはいえ、物語の主人公だけあって、
これまでの荀ケ像よりも清廉な印象を受けた。 オススメ度:8

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