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読書感想文2019 part 3

「読書感想文2019」 part3は、5月〜6月の読書録です。

 ↓ Click NOVEL mark !
コメント  自覚 (今野 敏著、新潮文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「自覚 隠蔽捜査5.5」。 シリーズ第7作。
表題作を含む計7編を収録したスピンオフ短編集。
前回の短編集(第4作)は刑事部長の伊丹視点の作品だったが、
本作は大森署の部下をはじめ、竜崎にゆかりのある警察官たちの
物語。 最終話は伊丹視点の一編。
長編も短編もリーダビリティーの高い安定した品質のシリーズ。
本作も登場人物たちを通して竜崎の凄さが伝わってくる。
第4・5作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2
コメント  迷子の王様 (垣根 涼介著、新潮文庫)   作品の紹介 

正式タイトルは「迷子の王様 君たちに明日はない5」
リストラ面接官、村上 真介の仕事と心を描いた人気シリーズの5作目にして
完結編。 表題作を含む計4編を収録。
最終話で村上の勤める企業が廃業することが決定。
村上はこれまで面接してきた人たちに会いに行き、新たな道を見つける、、、。
前向きだけれど、静かな幕の引き方。 良質なシリーズだったと思う。
オススメ度:8.1
コメント  民王 (池井戸 潤著、文春文庫)   作品の紹介 

突然の総理の辞任により、与党、民政党の幹事長、武藤泰山は総理となる。
しかし、突然、大学生の息子、翔と体が入れ替わる。
最近、盗み出された、CIAが開発した脳波を操る技術を何者かが使ったらしい
ことがわかる。 盟友の官房長官、狩屋が献身的なサポートをするが、おバカ
な大学生、翔の国会答弁は散々なデキ。 翔の代わりに採用面接を受けた泰山
も面接官を怒らせてしまう。 さらに経済産業大臣の鶴田も、おバカな大学生
の息子、ワタルと体が入れ替わる。 泰山は野党第一党、憲民党の党首、蔵本
の仕業と推理するが、蔵本も娘のエリカと体が入れ替わっていた、、、。
そんな中、頼みの綱の狩屋の愛人スキャンダルが発覚。 泰山は絶体絶命の危機
に陥る。 やがて、事件の黒幕が野党第二党、共和党の党首、冬島であることが
わかる。 冬島はアメリカの製薬会社と組んで、新薬承認を進めるべく、民政党
と憲民党を一挙に凋落させようと目論んでいた。 さらに、翔は、エリカと共通
の友人、真衣が冬島に利用されていることを突き止める。 冬島との関係を翔に
指摘された真衣は捜査に協力。 やがて事件は解決する、、、、、、。
「こんな設定あり?」と思いながら読み進めていったけど、ドライブ感があり
リーダビリティーも高いので、あっという間に読了。
2015年ドラマ化。 オススメ度:8.1
コメント  望郷 (湊 かなえ著、文春文庫)   作品の紹介 

瀬戸内海の白綱島という架空の島を舞台にした計6編を収録した連作短編集。
島から離れられない人、島を捨てた人、島を出て島を想う人。
島を巡り絡み合うさまざまな人間の葛藤、後悔、苦悩、想いを描いた作品。
それぞれの作品にひとあじ違ったミステリーの要素も盛り込まれている。
すべての作品を覆う世界観はやや暗め。
収録作「海の星」が2012年「日本推理作家協会賞(短編部門)」受賞。
さすがにこの作品は秀逸。 オススメ度:8.1
コメント  老後の資金がありません (垣谷 美雨著、中公文庫)   作品の紹介 

後藤篤子、パート勤めの53歳。 夫の章は優柔不断な男、57歳。
婚約中の28歳の娘、大学4年生の息子を育て上げ、老後の資金、1,200万円
でなんとか暮らしていけると思っていた、、、。
しかし、娘の結婚相手に引きずられ、派手な結婚式に300万円の支出。
舅の葬儀と墓石でさらなる支出し、老後の資金は300万円まで激減。
しかも姑への月9万円の仕送りが重くのしかかる。 そんな矢先、夫婦が
そろって失業。 結婚した娘がDV被害にあっているのでは疑い始める。
姑の近所に住む義妹とは折り合いが悪く、頼りにできない。
経済的に追い込まれた篤子は、仕送りをやめる代わりに姑を引き取る決断を
する。 これまで決していい関係とはいえなかったが、姑は月6万円の年金を
篤子に差し出す。 そして篤子の友人の年金詐欺まがいの依頼を姑が引き受け、
篤子と姑の関係はよくなっていく。
さらに、篤子の悩みの種が次々と解決していき、、、、、、。
50代以上の人が読んだら、身につまされるであろうお話。
少しコメディータッチで描かれている部分はあるが、他人事ではないリアリ
ティーのある災難が降り注ぐ主人公に感情移入してしまう。
オススメ度:8.1
コメント  ふたつのしるし (宮下 奈都著、幻冬舎文庫)   作品の紹介 

温之(はるゆき)と遥名、ふたりの「ハル」の物語。
温厚で無口、落ちこぼれの温之。 美人で頭がよい優等生の遥名。
温之が小学1年生、遥名が中学1年生の1991年から物語は始まる。
1997年、2003年と話は進んでいく、、、。
高校生のとき、母を亡くし、家を出たまま、天職とも言える電気工事
の職を得た温之。 一流大学を出て、大手企業に就職したものの、不倫
の末、相手から別れを告げられる遥名。
2011年3月、東日本大震災の日、ふたりの「ハル」の運命が交錯する。
2年前、一瞬だけすれ違った遥名の安否を気遣った26歳の温之が32歳の
遥名に声をかけ、自転車で家まで送る、、、。
ロマンティックなラブストーリーとも言えるけど、出逢うまでのふたり
の生きてきたプロセスの描写がいい。 そして、2021年を描く最終章も
物語にすてきな余韻を残した終わり方でグッド。
オススメ度:8.2
コメント  遠くの声に耳を澄ませて (宮下 奈都著、新潮文庫)   作品の紹介 

計12編を収録した短編集。 ふつうの人々の等身大の日常を描いた佳作。
いろんな人生を切り取って趣向の違う話が並んでいるのだけれども、それぞれの
物語がゆるやかに、でも精緻につながっている。 著者らしい世界観にも好感。
オススメ度:8
コメント  満願 (米澤 穂信著、新潮文庫)   作品の紹介 

計6編を収録したミステリー短編集。
趣向の異なったハイレベルの作品がずらりと並ぶ一冊。 読み応え十分。
みごとな構成、ドライブ感、そしてリーダビリティー。
ミステリーファンなら絶対に「買い」。 読後、人に勧めたくなる一冊。
2014年「週刊文春ミステリーベスト10」:第1位。 2015年「このミス
テリーがすごい」:第1位。 2015年「このミステリが読みたい」:第1位。
史上初のミステリー賞 三冠を達成。 さらに2014年「山本周五郎賞」も受賞。
2018年スペシャルドラマ化。 オススメ度:8.6
コメント  政と源 (三浦 しをん著、集英社オレンジ文庫)   作品の紹介 

荒川と隅田川に挟まれた三角州に位置する東京都墨田区Y町。
つまみ簪職人の源二郎と元銀行員の国政は共に73歳の幼馴染。
源次郎は妻に先立たれ、子どももいない。 20歳の弟子、鉄平のめんどうを
見ている。 国政は三年前に妻が長女のもとに去り、ひとり暮らし。
性格も生き方も正反対の二人だが、いつのまにか二人でいる。
そんな二人の日常を描いた6つの人情譚。
いつも思うことだけど、三浦しをんさんの守備範囲の広さに改めて感心。
73歳の二人の大人気のないけんか、意地の張り合いに妙な味わいがある。
政と源の妻との馴れ初めを語った四章が秀逸。
オススメ度:8.3
コメント  でーれーガールズ (原田 マハ著、祥伝社文庫)   作品の紹介 

1980年の岡山。 佐々岡鮎子は父の転勤に伴い、岡山の女子高に転校する。
架空の恋人、ヒデホとの恋を描いたマンガをクラスメイトの武美に見られたことが
きっかけで二人は大親友に。 しかし、武美が会ったこともないヒデホに恋をする。
そして、鮎子にリアルな彼氏ができて、武美との仲がぎくしゃくする。
高校1年生の終業式の日、武美が広島に引っ越すことになる、、、。
高校卒業から27年後、母校の教員となった武美は人気漫画家になった鮎子に創立
120周年記念式典での講演を依頼する。 久々に再会した鮎子と武美は旧交を温め、
記念式典の当日を迎えるが、、、、、、。
タイトルの「でーれー」とは「ものすごい」という意味の岡山弁。
なつかしくて、あたたかくて、せつない物語。 オススメ度:8.1
コメント  Dカラーバケーション (加藤 実秋著、集英社文庫)   作品の紹介 

「インディゴの夜」シリーズの第4作。 表題作を含む4編を収録。
あいかわらず独特の世界観、ドライブ感。 中毒性も高いシリーズ。
ミステリー要素も高いレベル。
私の中ではポスト「池袋ウエストゲートパーク」的な作品。
個人的には新キャラの文科系ホストたちが物足りなかった。
第2作と第3作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2
コメント  ブラックスローン (加藤 実秋著、集英社文庫)   作品の紹介 

「インディゴの夜」シリーズの第5作。 シリーズ初の長編。
DJ本気(マジ)の常連客、真千子が殺害される。 DJ本気の疑いを
晴らすため、オーナーの晶と塩谷、人気ホストたちが捜査を開始。
やがて真千子がオンラインゲーム上で、バーチャルの「indigo」を
経営していたことがわかる。 真千子の操る「indigo」は本物の店
とそっくりで、DJ本気たち人気ホストのアバターとチャットできる
つくりだった。 晶たちは、店のホストや客にリアルの世界で接触。
真千子が、バーチャルマネーを現金に交換する闇ビジネスに加担
していたことが判明する、、、。
作品の世界観、ドライブ感はそのままに、ネットの世界の事件という
新しい趣向、試みは「買い」。 だけど、200ページの長編よりも
50ページの短編のほうがこのシリーズには合っている気がする。
オススメ度:8.1
コメント  ロケットスカイ (加藤 実秋著、集英社文庫)   作品の紹介 

「インディゴの夜」シリーズの第6作。 表題作を含む4編を収録。
「インディゴ」のオーナー、晶とNo.1ホスト、ジョン太に転機が
訪れる巻。 いつものキレ、爽快感がやや足りない印象。
次作に期待。 オススメ度:8
コメント  メゾン・ド・ポリス (加藤 実秋著、角川文庫)   作品の紹介 

計5編を収録したミステリー小説。
柳町北署の新人刑事、牧野ひより、26歳。 念願の刑事にはなれたものの、
雑用ばかりの日々。 そんな中、生きたまま被害者の体を焼くという猟奇的
な殺人事件が発生。 事件は4年前の「デスダンス事件」の模倣犯による犯行
と考えられ、ひよりは4年前に「デスダンス事件」を担当した元刑事、夏目に
聞き込みをするよう指示される。
ひよりが訪れたのは5人の元警察官が暮らすシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」
だった。 元捜査一課の敏腕刑事、52歳の夏目をはじめ、所轄勤務にこだわり
つづけた元熱血刑事の迫田、科警研で科学捜査のプロだった藤堂、警視庁幹部
だった伊達、そして事務畑のプロである管理人の高平。 5人に囲まれ、ひより
は、捜査状況を話す。 翌日から夏目とともに捜査を開始。 夏目をはじめ元
警察官たちの助けを借り、無事、事件を解決する。
警察官魂に火がついた面々は、その後も、迫田、藤堂がひよりとペアを組み、
難事件を解決していく、、、。
最終話で、夏目が刑事を辞めた理由、ひよりの父の失踪の真相が明らかになり、
しかもそのふたつが同じ事件でつながっているとわかる。 次作に続く感じの
終わり方。 第二作にも期待。
同じ著者の手による「インディゴの夜」とはひとあじ違ったミステリーだけど、
人物造形のうまさは、この作品でも同様。 元警察官たちのシェアハウスという
設定もグッド。 2019年ドラマ化。 オススメ度:8.2
コメント  女神めし (原 宏一著、祥伝社文庫)   作品の紹介 

「佳代のキッチン」シリーズの第二作。 表題作を含む計6編を収録。
失踪した両親を捜すため、調理屋を始めた佳代。 移動キッチンの軽自動車で
全国を巡るが、再会は叶わなかった。 しかし「松江のばあちゃん」から全国
の港町に調理屋の支店を開いてと依頼され、キッチンワゴンを走らせる。
今回は、氷見(富山)、下田、船橋、尾道、大分、五島列島が舞台。
氷見では、幸先よく、調理屋を開業したい女性が見つかる。
下田でも調理屋を開業したいという希望者が見つかるが、佳代は本人のために
敢えて断る。 さらに港町で調理屋を続ける佳代に新しい出会いが訪れる。
「調理屋をしたい人、できる人を探す」という第一作とは違うテーマにした
ところが好印象。 とはいえ、本作も第一作同様、佳代と出逢う人たちとの
あたたかでまっすぐな関係に救われる。 第三作にも期待。
それにしても。 濃いキャラの男性が主人公のイメージが強い著者がつくり
だした本作の主人公がいい意味で意外。
第一作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.2
コメント  珈琲店タレーランの事件簿 5 (岡崎 琢磨著、宝島社文庫)   作品の紹介 

京都でひっそりと営業を続ける珈琲店「タレーラン」を舞台にした人気シリーズ
の第五作。 24歳のバリスタ、切間 美星がさまざまな謎を解き明かすお話。
美星に想いを寄せる店の常連、アオヤマは中学一年生のとき、周囲になじめずに
いたが、8歳年上の美容師、眞子に励まされ、助けられ、友だちができる。
アオヤマは、初恋の人、眞子のために理想のコーヒーを探すことを決心。
しかし、眞子は、東京に行ってしまう、、、。
11年のときを経て、アオヤマは、京都で眞子に偶然、再会する。 しかし、深い
悩みを抱えている様子。 アオヤマは、眞子を「タレーラン」に連れていき、美星
に引き合わせる。 美星は眞子の嘘を見破るが、彼女はさらに深い闇を抱えており、
アオヤマは、その闇に引き込まれていく、、、。
六章建ての作品。 第一章のできがすばらしかっただけに期待したけど、第二章以降、
第一章を超える章はなく。 「源氏物語」をミステリーのベースに敷いたものの、
古典に興味のない人にはどうなんだろう。 明るい話題が少ない巻だったけど、美星
とアオヤマの距離は縮まったよう。
第四作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.1
コメント  ランクA病院の愉悦 (海堂 尊著、新潮文庫)   作品の紹介 

表題作を含む計5編を収録した医療系の短編集。
リアルな話が2編。 ファンタジー、SF系の話が3編の構成。
四話目は、バチスタシリーズ「ジェネラルルージュの伝説」の主人公、速水の
その後を描いた物語。 気軽に読める作品だけど、医療の近未来を描いた3編は
シャレにならないと感じた。 オススメ度:8

コメント  猫鳴り (沼田 まほかる著、双葉文庫)   作品の紹介 

三部構成の作品。 第一部は40歳の信枝と53歳の藤治夫婦と捨て猫モンとの
出会いの物語。 流産した哀しみの癒えない夫婦は家の前に捨てられた子猫
を何度か捨てに行くが、結局、飼うことにする。 やがて子猫を捨てた近所
の小学生、アヤメとの交流が始まる。
第二部は、第一部の数年後、中学生になったアヤメの同級生、行雄の物語。
引きこもりになった行雄は、公園でモンに出会う。
第三部は、信枝に先立たれ、仕事も退職した60代半ばになった藤治と老猫と
なったモンとの心の交流と別れを描いた物語。
「本の雑誌」2010年度 文庫「エンターテインメント部門」:第1位。
ふしぎな感覚、世界観の物語。 ふつうの小説に飽きた人にはいいかも。
ただ個人的にはイマイチ感情移入できずに終わった。 オススメ度:8

コメント  ジャイロスコープ (伊坂 幸太郎著、新潮文庫)   作品の紹介 

計7編を収録した短編集。 いろんな趣向の話が詰まった一作。
書き下ろしの最終話でそれまでの6編を軽くつないでいる。
初期の著者らしい世界観の作品(「if」)も収録。  オススメ度:8.1

コメント  ふる (西 加奈子著、河出文庫)   作品の紹介 

池井戸花しす、28歳。 社員5人の会社でAVのモザイクがけの仕事を
している。 黙々と働く地味めの女性。 30歳のさなえとルームシェア
をして暮らしている。 ICレコーダーで一日のところどころを録音し、
寝る前に聴くという変わった趣味の持ち主。
物語は、花しすの現在と過去(小学生、中学生、高校生、大学生、24歳、
26歳)が交互に描かれる構成。
花しすと会社の同僚二人との掛け合いがツボにはまった。
花しすにしか見えない「白いもの」が出てきたり、花しすの人生のあち
こちに「新田人生」という男性(時には男の子。同一人物ではない)が
出てきたり、ちょっとふしぎな要素も盛り込まれているけど、それもこの
作品の味なのかな。 オススメ度:8

コメント  神様のカルテ 0 (夏川 草介著、小学館文庫)   作品の紹介 

「神様のカルテ」の前日譚。 計4編を収録した短編集。
第一話は、卒業を控えた医学生の一止と仲間たちの物語。
シリーズでおなじみの進藤、砂山、千夏などが登場。
第二話は、第一話と同じころの本庄病院の転換期を描いている。
やがて一止の師となる内科部長の大狸先生こと板垣と辣腕怜悧な事務長、
金山の交流、医療にかける熱い想いが語られている。
第三話は、研修医として本庄病院で働き始めた一止の物語。
第四話は、常念岳から蝶ヶ岳へ縦走する四人の登山者の物語。
一止と結婚する前の榛名が登場。
どれも読みごたえのある佳作。 やっぱり好きだなぁ、このシリーズは。
オススメ度:8.4

コメント  埋み火 (日明 恩著、双葉文庫)   作品の紹介 

「鎮火報」に続く「Fire's Out」シリーズの第二作。
第一作から一年半後、22歳になった雄大の物語。
高齢者の家の火災が続く。 火事の原因はどれも不可解な失火で、不幸な偶然が
重なったものだと考えられた。 しかし、焼死者が出たことを重く見た雄大は、
本署の仁藤とともに失火でははなく、自殺の可能性を疑い始める。
やがて雄大は、火災当日、周囲の家が更地だったり、留守だったりで延焼した
場合も他に犠牲者が出る可能性がなかったこと、火災のあった家が遺産相続の
問題を抱えていたこと、そして犠牲者が区民講座の受講者仲間だったことをつき
とめる、、、。 ほどなくして、次の犠牲者が出るかと思われたが、通りがかり
の青年と近所の青年によって火災現場から救出される。
その直後、雄大は、かつて火災現場で見かけた中学生の男子を尾行し、その子が
公園で老人に意図的に火災を起こすレクチャーをしているのを聞く。 雄大は
その男子、福島裕孝を捕まえ、今まさに焼身自殺を決行しようとしていた老人の
家に踏み込み、火事を消し止める。 しかし、老人の放火は狂言だった、、、。
ミステリー色はそれほどでもない。 雄大と親友、裕二、そして裕孝の友情を
描いた巻。 550ページを超える大作。
第一作のブックレビューはこちら。  オススメ度:7
コメント  昭和侠盗伝 (浅田 次郎著、集英社文庫)   作品の紹介 

「天切り松 闇がたり」シリーズの第四巻。
年老いた元盗賊の松蔵が刑務所で囚人に昔語りを聞かせるというスタイル。
これまでの大正時代の話から、時代は昭和へ。 26歳になった松蔵はいまだ一人前
とは言えないが、親分、兄弟分に可愛がられ、鍛えられ、後に語り草となるような
貴重な経験を通して日々成長していく、、、。
第三巻を読んでから早や14年。 久々に読んだけど高いレベルのリーダビリティー。
「プリズンホテル」などシリーズの名作が多い著者の代表作のひとつに挙げる人も
多いのでは。
シリーズ第一巻〜三巻のブックレビューはコチラ。  オススメ度:8.2
コメント  ライムライト (浅田 次郎著、集英社文庫)   作品の紹介 

「天切り松 闇がたり」シリーズの第五巻。
第四巻に引き続き、昭和初期の時代を描いている。 第四巻、五巻とも、戦争が
国と民に暗い影を落としてきたことを考えさせられる内容。
安心して読める安定感。 オススメ度:8.2
コメント  乾坤の児 (仁木 英之著、講談社文庫)   作品の紹介 

「千里伝」シリーズの第四作にして完結編。
滅びたはずの隋の王、煬帝が時を曲げ、天地の因果をあやつりはじめる。
絶海は煬帝につき、妻のピキを殺され絶望したバソンは敵に連れ去られる。
異界の王、共工、息子の羽眠たちも絶海に攻められるが、何とか生き延び、
共工、玄冥、蔑収たちは、羽眠の体内に身を隠す。
仙女の麻姑、道士の趙帰真は虚空に飛ばされていた。
千里は成都の自分の家に戻るが、母には千里の記憶がなく、煬帝が生き続けた
ように人々の意識が変えられていることを知る。
まもなく、千里は弟分の鄭紀昌と天敵の文魁之と再会する。 二人は煬帝を
倒すべく反乱軍を組織し戦っていたが、絶海との戦いの後、仲間が去る。
鄭紀昌と文魁之は、自らの命を犠牲にして絶海に再度挑むが、敗れてしまう。
一方、千里を探す旅に出た羽眠は、空の精、空翼と趙帰真に出会う。
まもなく羽眠たちと出会った千里は、空翼とともにバソンを救い出す。
羽眠の中から出た共工、蔑収は、絶海に戦いを挑む。 その間、趙帰真は、
千里、バソン、玄冥らとともに、五嶽真形図の再生を試みる。
蔑収は、自らの命と引き換えに、ついに絶海の心を開く。
やがて虚空の世界から麻姑、もう一人の趙帰真、神仙たちが現れ千里と合流。
煬帝の世界の趙帰真は役目を終え、竜の姿に戻る。
麻姑たち神仙は、共工たちと煬帝の側近の道士、呂用之に戦いを挑む。
呂用之を倒したかに見えたが、ついに煬帝が姿を現し、麻姑たちの力を取り
込もうとする。 しかし、千里、バソン、絶海らが五嶽真形図を再生する。
いつのまにやらなんだかスケールの大きなファンタジー作品に変貌した感が
あるけど、無事、完結。
第二作と第三作のブックレビューはこちら。  オススメ度:8.1
コメント  春秋名臣列伝 (宮城谷 昌光著、文春文庫)   作品の紹介 

中国 春秋時代に活躍した名臣二十人の軌跡を描いた短編集。
「史記」でも有名な管仲、子産、晏嬰、伍子胥、孫武などを取り上げている。
一編が20ページの構成。 すでに長編として読んだ人物もいたけど、国ごとに
名臣を俯瞰して読み進めるのも興味深い。 ただし「史記」の世界の入門書と
するにはややレベルが高めか。
姉妹作「戦国名臣列伝」のブックレビューはコチラ。  オススメ度:8
コメント  賤ケ嶽 (岡田 秀文著、双葉文庫)   作品の紹介 

本能寺の変の後、毛利氏と和睦を結んだ秀吉は光秀を撃破。
柴田勝家も軍を進めるが、合戦には間に合わなかった。
秀吉は、間を置くことなく清須会議を招集し、信長とともに本能寺の変で斃れた
長男、信忠の遺児、三歳の三法師を担ぎ出す。 日に日に秀吉の勢いが増す中、
信長の三男、信孝は三法師を軟禁。 秀吉は、すぐさま、信長の次男、信雄を
織田家の跡目に据える決断をし、信孝の居城、岐阜城に兵を進める。 なすすべ
もなく、信孝は母と娘を人質に出し、秀吉に屈服する。 長浜城を預かる勝家の
甥で養子の勝豊も秀吉に降伏する中、ひとり滝川一益だけは北伊勢で反秀吉の軍
を起こし、気を吐いていた。
秀吉と勝家の戦いは、倍以上の兵を擁する秀吉有利の内に始まる。 琵琶湖北部
の戦線が膠着する中、岐阜城の信孝が兵をあげ、秀吉自らが兵を率いて岐阜に進軍
する。 勝家方は佐久間盛政の奇襲策をとり、秀吉方の中川清秀を自害に追い込む。
勝家方は緒戦に勝利するが、秀吉が信孝攻めの軍を率いて帰陣。 秀吉はすぐさま
総攻撃をしかける。 これまで進退を決めかねていた前田利家は、自陣を引き払い
領地への帰路につく。 ここにきて、勝家方の敗戦は決定的となり、勝家は居城、
北ノ庄城に落ち延び、最期のときを迎える、、、。
本能寺の変から賤ケ岳の戦いまでを忠実に丹念に描いた一作。
秀吉側の視点のみならず、勝家側の視点、信孝、信雄、滝川一益など様々な人物
の視点を駆使し、それぞれの思惑、迷い、決断を巧みに描いている。
中でも、勝家側の武将であり、秀吉の親友でもある前田利家の苦悩が見どころ。
600ページの大作。 オススメ度:8
コメント  極道大名 (風野 真知雄著、幻冬舎時代小説文庫)   作品の紹介 

「大名やくざ」シリーズの続編。 新シリーズの第一作。
旗本の父とやくざの母の間に生まれた有馬 虎之助。 旗本とやくざの二足のわらじを
はいていたが、久留米藩の藩主の座を手に入れる。
虎之助は八歳の七代将軍家継に懐かれ、無謀にも副将軍になることまで目論む。
しかし、家継が急死。 虎之助は消去法で尾張徳川家の継友を推すが、八代将軍に選ばれた
のは紀州徳川家の吉宗だった。 十年前に虎之助にぼこぼこに殴られた吉宗は、久留米藩、
虎之助の実家、丑蔵一家、そして虎之助をなぶり潰すと宣言する。
一方、やくざの世界も、新宿の座頭勝が勢力を急拡大し、丑蔵一家の脅威となる。
座頭勝は吉宗とつながっていた、、、。
新シリーズになったものの、前シリーズのドライブ感やノリのよさは健在。 ハラハラする
けど、ピンチになったときの虎之助の本領発揮ぶりをを見ているほうがおもしろいかも。
「大名やくざ」第六作〜八作(完結編)のブックレビューはコチラ。  オススメ度:8.1
コメント  馬超 (風野 真知雄著、PHP文庫)   作品の紹介 

三国志の蜀、劉備軍の五虎将軍のひとり、馬超の物語。
西暦184年、8歳の馬超は、父、馬騰の盟友である韓遂と出会い、刀を習う。
194年、18歳となった馬超は、馬騰、韓遂とともに初陣となる戦に出る。
数的優位に立つ政府軍に奇襲をしかけ、大将首を七つ取るという戦果を残す。
その後、仲違いをした馬騰と韓遂だったが、帝を擁した曹操の仲介で和解。
ともに曹操に仕えることになる。
200年、曹操は、白馬の戦い、延津の戦い、官渡の戦いで袁紹を撃破。
202年、26歳になった馬超は、父に代わって、汾水の戦いに出陣。
袁尚の軍を破り、曹操に認められる。
208年、曹操は馬超に都で仕えるように要請するが、馬超が辞退。 代わりに
馬騰が都に赴く。 向かうところ敵なしと見られていた曹操が赤壁の戦いで
劉備と孫権の連合軍に敗退する。
211年、馬超と韓遂は曹操に反旗を翻す。 潼関の戦いで曹操率いる二十万の
大軍と激突。 十万の軍を率いた馬超は曹操をあと一歩の所まで追い詰める。
しかし離間の計を仕掛けられ、韓遂と決裂。 曹操軍に敗れる、、、。
212年、出撃中に城を乗っ取られ、妻子を殺されてしまう。
馬超は、かねてから親交のあった五斗米道の教祖、張魯の弟、張衛を頼り、
要衝である祁山を制圧するが、曹操軍に攻められ、逃亡する。
再び張魯を頼った馬超は、張魯の頼みを聞き入れ、劉備軍を攻める。
劉備の義弟、張飛との一騎打ちとなるが、引き分ける。 しかし、馬超に反感
を持つ張魯軍の将軍の奇襲を受け、逃げ延びる。 まもなく、劉備から誘いが
来て、劉備に仕えることを決意する。
219年、馬超は曹操軍を追い詰めるが、再び、あと一歩の所で取り逃がす。
220年、馬超は曹操を打ちとるための精鋭部隊の調練に明け暮れていた。
しかし、曹操は病で息をひきとる、、、。
222年、馬超も病に侵され、静かに最期のときを迎える、、、。
「三国志」では知れなかった劉備に仕える前の馬超の背景が理解できた一作。
「妻はくノ一」、「大名やくざ」など軽妙なシリーズや怪異な物語の印象が強い
著者が舞台を中国に移し、実在の人物を描いためずらしい作品。
オススメ度:8
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