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読書感想文2009 part 3
「読書感想文2009」 part3 は、5月〜6月の読書録です。
後半は「水滸伝」(5-19)てんこ盛りでお届けします。
↓ Click NOVEL mark !
裸者と裸者(上) (打海 文三著、角川文庫)
作品の紹介
サブタイトルは「孤児部隊の世界永久戦争」。
世界的な経済恐慌、中国の政権交代、シベリアやチベットの独立、、、世界は大動乱の時代を迎えていた。
日本も、軍部によるクーデターをきっかけに、政府軍と反乱軍が覇権を争う内戦状態に突入した。
⇒ 海人(かいと)が6歳のとき、始まったばかりの戦争に巻き込まれて、父が死んだ。
7歳のとき、母が兵士に連れ去られ、戻ってこなかった。 海人は、3歳の妹、恵(メグ)と1歳の弟、隆(リュウ)
を養うため、学校に行かずに懸命に働いた。 行くあてもなかった海人たちは、里里菜(りりな)の好意で、彼女
の家の敷地内に掘立小屋を建てて暮らすことを許される。
13歳のとき、海人は突然、政府軍に徴用され、最前線で戦うはめになった。 しかし、軍の敗走の混乱に乗じて自由の
身となり、家に戻る途中、桜子、椿子という双子の姉妹と知り合う。 海人は、65日ぶりにメグとリュウとの再会を
果たした。 桜子、椿子も、海人の住む町で暮らすことになる。 海人は、ロシア人マフィア、ファンの助けで、新しい
職にありつくことができ、戦時下とはいえ、つつましく生きていける希望を得た。
⇒ 15歳のとき、メグが日本人マフィアに目をつけられ、兄弟3人は、桜子、椿子の家で隠れ暮らすことになる。
しかし、海人は、再び徴兵され、孤児部隊の一員として、最前線に配属される。
⇒ この後、海人は、孤児の部隊で頭角を現し、一歩ずつ階級を登っていきます。 軍の中でも、外人部隊の司令官、
イリイチや孤児部隊の女性司令官、白川の信頼を勝ち取り、戦利品を闇市場に流し、大金を手にします。
しかし、金に執着することなく、性的マイノリティの武装組織、ンガルンガニの代表、森まりに資金提供し、孤児院を
設立したり、妹と弟を東京の安全なエリアで教育を受けさせたりと、人間的にも成長していきます。
さらに、子どものころ、住む場所を与えてくれた戦争未亡人、里里菜との恋も経験し、男としても成長することに。
⇒ 不条理な状況の中で、たくましく、懸命に、ときには、したたかに生き抜く海人に読者はみな深く感情移入すること
と思います。 下巻で主人公となる桜子・椿子の双子姉妹がいい味を出していました。
「本の雑誌」2008年度 文庫 総合部門:第2位 オススメ度:8.2
裸者と裸者(下) (打海 文三著、角川文庫)
作品の紹介
サブタイトルは「邪悪な許しがたい異端の」。
主人公は、上巻で、海人(かいと)が命を助けた桜子・椿子の双子の姉妹。
⇒ 桜子・椿子は、海人の資金援助で、海人の妹、メグ、弟、リュウとともに、東京の学校に編入したが、
退学になり、府中で長距離トラックのドライバーとして暮らしていた。
ある日、政府軍の横暴に耐えかねた桜子・椿子は、兵士に発砲し殺害してしまう。 反逆者として指名手配
された姉妹は、府中市南部に広がる無法地帯のスラム、九竜シティに逃げ込む。
二人は、朝鮮系のマフィア、李明甫と知り合い、軍事訓練を受ける。 さっそく、政府軍のドラッグ運搬車襲撃に
成功。 大金を手にし、東京に出てきていたンガルンガニの代表、森まりとも協力体制を組む。
桜子・椿子は、同じトラックドライバーの万里(ばんり)、アイコと組んで、再びドラッグ運搬車襲撃に成功。
手に入れた大金を元手に女の子だけのマフィア「パンプキン・ガールズ」を結成する。
⇒ ここから後は、桜子・椿子率いるパンプキン・ガールズの活躍が描かれます。 とは言え、痛快さを伴う破竹の
進撃というわけではなく、緊迫した戦況のもと、朝鮮系マフィアの後継者争い、実の父親が率いる宗教団体との
戦い、九竜シティ内のマフィアとの争いなどの難題をくぐり抜けながら、苦悩し、怒り、多くの仲間を失います。
⇒ 時には、海人の助けを借りながらも、りりしく、したたかに時代を駆け抜けていく桜子・椿子は、かっこいいの
ひとことにつきます。
⇒ 上巻とつながっている話でありながら、独立した作品として成立していました。 (単行本で)発売当初から話題に
なっていただけのことはある、ハイレベルの物語。
「本の雑誌」2008年度 文庫 総合部門:第2位 オススメ度:8.2
スイッチを押すとき (山田 悠介著、角川文庫)
作品の紹介
2008年、政府は「青少年自殺抑制プロジェクト」を立ち上げる。 増加の一方を辿る青少年の自殺に歯止めを
かけるべく、子どもをストレス環境に置き、自殺に至る精神構造を解明することが目的だった。
しかし、その手段は常軌を逸するものだった。 政府は無作為に選んだ子どもに5歳の時点で心臓の手術を受けさせ、
特殊な機器を埋め込む。 そして、さらに5年後、子どもが10歳になった時点で全国のセンターに収容し、ほとんど
自由のない、無為な生活を送らせる。 子どもたちは、高ストレスの環境で生きる意味を見失っていき、一人一人に
与えられた小さな機械の赤いスイッチを押す。 このスイッチこそが、心臓に埋め込まれた機械が瞬時に死をもたらす
自殺スイッチだった、、、、、、。
南 洋平は、25歳でセンターの監視員となり、2年が過ぎていた。 2030年、洋平が新たに着任した横浜センターでは、
7年間も自殺スイッチを押さずにいる子どもたちが4人もいた。 ふつうの子どもなら1年ももたずにスイッチを押して
しまうところ、4人はそれぞれ生きる目的を持ち、互いに支えながら、17歳を迎えていた。 洋平は、この4人に親近感
を抱き、次第に交流を深めていく。
しかし、4人のうちの1人が、別のセンターに収容されている幼なじみの自殺をきっかけに、スイッチを押してしまう。
やりきれなさといいようのない怒りを覚えた洋平は、残りの3人を連れ出して、センターを脱走する、、、、、、。
⇒ 非現実的な設定でありながら、ぐいぐい読者をひきつける作品です。 特に、物語の後半で、洋平が3人の子ども
たちの願いを次々と叶えていくくだりは感動ものです。 さらに、終盤では、意外な事実が次々と明らかになり、悲しくも
美しいエンディングに導きます。 オススメ度:8
袋小路の男 (絲山=いとやま 秋子著、講談社文庫)
作品の紹介
表題作(「袋小路の男」)を含む3篇の短編を収録。 とは言え、「袋小路の男」と二本目の「小田切孝の
言い分」は、それぞれ女性の視点、男性の視点で描かれた一組の作品です。
大谷 日向子(ひなこ)は、高校の1年先輩、小田切 孝に恋をする。 以来、18年間もの間、他の男と付き合う
ことはあっても、小田切への思いが覚めることはなかった。 いっしょに飲みにいったり、ドライブしたり、
電話したり、時には、部屋に上がり込んだりの仲なのに、18年もの間、手さえもつないでくれない小田切から
日向子は決して離れることはできない、、、、、、。
⇒ 大きな盛り上がりがあるわけでもなく、明確なオチがあるわけではないのだけど、二人の絶妙な距離感や
関係を、エピソードや心の動きをていねいに積み重ね、読者が知らない間に納得してしまっている。
そんな感じの作品でした。
⇒ 個人的には、上記2編よりも、最後に収録されている「アーリオ オーリオ」がいちばんよかったです。
40前の男と中学生の姪っ子のささやかな交流を描いた佳作。 星にまつわるエピソードがナイスでした。
「本の雑誌」2008年度 文庫 恋愛小説部門:第1位。総合:第8位。
2004年度「川端康成文学賞」受賞作。 オススメ度:8.2
ナ・バ・テア (森 博嗣著、中公文庫)
作品の紹介
「スカイ・クロラ」シリーズの第2弾。 「スカイ・クロラ」シリーズは、2009年6月段階で5冊が刊行されています。
本作は、第2作ではあるものの、時系列的には最も昔の話です。 ちなみに、第1作「スカイ・クロラ」がいちばん
新しい時代を描いています。 「スカイ・クロラ」シリーズのラインナップは、コチラ↓をご参照ください。
⇒ 「スカイ・クロラ」シリーズ
時系列の関係もあり、1作目を読んでいなくてもだいじょうぶです。 むしろ、この第2作からシリーズを読むほうが
いいのかもしれません。 この作品の主人公は、第1作「スカイ・クロラ」に出てきた司令官、クサナギです。
ちなみに「ナ・バ・テア」とは「None But Air」のこと。
※「スカイ・クロラ」のレビューは、読書感想文2008 part4 をご参照ください。
【あらすじ】 平和な時代の象徴として、ショーとしての戦争が存在する近未来。 戦争に参加するのは「キル・ドレ」
と呼ばれる10代の少年・少女たち。 「キル・ドレ」は戦闘以外では死なない(死ねない)遺伝子操作で生まれた
特殊な存在だった。 キル・ドレの一人、草薙 水素(スイト)は、戦闘機のパイロットになって一年。 最初の
配属先で好成績をあげ、名門チームに転属となる。 そこには、ティーチャと呼ばれる伝説のパイロットがいた。
ティーチャは、キル・ドレではない唯一の大人のパイロットだった。 クサナギは彼に憧れる、そして、、、、、、。
⇒ 空を飛んでいる時しか生を実感できないクサナギの、あきらめにも似た心情を透明感のある文章と世界観で
紡いだ作品でした。 第1作「スカイ・クロラ」よりシンプルな構成だった分、キル・ドレの内面が見えやすかった
かもしれません。 しかし、戦闘シーンの描写が多く、話の展開範囲が小さかったので、個人的には、「スカイ・
クロラ」の方がおススメ。 オススメ度:7.3
ゆめつげ (畠中 恵著、角川文庫)
作品の紹介
「しゃばけ」シリーズで有名な畠中 恵さんの時代小説(この作品は「しゃばけ」シリーズではありません)。
時代は幕末。 上野の小さな神社の神官、弓月と信行は22歳と18歳の兄弟。 弓月には神鏡を使って、過去や未来を
見る「ゆめつげ」の能力があるが、これまであまり役にたったことはない。 ところが、弓月の能力の噂を聞いた
大神社の神官、彰彦が「ゆめつげ」の依頼にやって来た。 8年前に行方不明になった大店(おおだな)の一人息子を
探し出してほしいのだと言う。 自分の能力に自信を持てない弓月だったが、謝礼に目がくらみ、引き受ける。
彰彦の神社に出かけると、我こそは行方不明になった息子であり、その育ての親であると名乗る親子が3組いた。
弓月はさっそく「ゆめつげ」の儀式を行うが、誰が本物かはわからない。 そうこうしている内に、育ての親を名乗る
男と女が次々と殺害される。 そんな中、弓月は「ゆめつげ」を続けるが、、、、、、。
⇒ 「しゃばけ」シリーズとはひとあじ違った作風でした。 「しゃばけ」が、ファンタジー×人情よりのミステリー
なのに対し、この作品は幕末という時代に翻弄されるいろんな立場の人の心を描いたミステリーだと思います。
個人的には「しゃばけ」の方が好みかな。 オススメ度:7.5
サンクスギビング・ママ (佐々木 譲著、扶桑社文庫)
作品の紹介
表題作(「サンクスギビング・ママ」)を含む計14編を収録した短編集。
著者がアメリカ西海岸から中西部をドライブ旅行したときの体験から生まれた物語を中心に構成されています。
ロード・ムービーならぬロード・ノベルのようなテイストの物語もあれば、ミステリー・テイストの物語も
あり、ビジネスマンを描いたかと思えば、ヒスパニックの移民を描いたりもして。
いろんな人間を通して、いろんな人生の一シーンを覗き込んだかのような作品集でした。
⇒ 著者の佐々木 譲(じょう)さんは、ミステリー小説、冒険小説、歴史小説など幅広い守備範囲をお持ちの
作家です。 僕にとっては、「笑う警官」や「警官の血」など警察小説のイメージが強いでしょうか。
「本の雑誌」2008年度 文庫 国内ミステリー部門:第8位。 とは言え、あまりミステリー色の強い作品集
ではありません。 オススメ度:7.5
ジェシカが駆け抜けた七年間について (歌野 昌午著、角川文庫)
作品の紹介
エチオピア人のマラソン・ランナー、ジェシカは、新潟で開催された国際レースに出場するが、わずか7kmで
棄権。 ジェシカの所属チームの監督、金沢は、レース中に殺される。 金沢の手には、ジェシカのネック
レスが握られていた。 警察はジェシカを疑うが、、、、、、。
⇒ 歌野 昌午さんが、名作「葉桜の季節に君を想うということ」の次に書いた作品。
前作のような、物語全体がトリックと化した作品か、、、と思いながら、読み進めました。
案の定、そうでした。 最後までトリックに気づかなかったのですが、残念ながら、前作のような「やられた」
感はなく。 個人的には、ここまでやる???と思ってしまいました。
「本の雑誌」2008年度 文庫 国内ミステリー部門:第5位。 オススメ度:7
痙攣的(けいれんてき) (鳥飼 否宇=ひう著、光文社文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「痙攣的 モンド氏の逆説」。 かなり変わったミステリー短編集(5編収録)。
ミステリーが、ロック、アート、サイエンスとの掛け算で構成されているのですが、ミステリー以外の部分、
ロック、アートなどの描写がかなりマニアックなので、興味がない人にはツライかも。
実験的な作風であることは評価できるけど、ここまで読者を選ぶのもいかがなものかと個人的には思います。
ミステリー部分がしっかりしているだけに、なおさらその感を強くしました。
「本の雑誌」2007年度 文庫 国内ミステリー部門:第5位。 オススメ度:7
乱世疾走 (海道 龍一朗著、新潮文庫)
作品の紹介
正式タイトルは「禁中御庭者綺譚 乱世疾走」。1569年、信長の時代のお話。
正親町(おおぎまち)天皇の側近、山科 言継(ときつぐ)と立入(たてり)宗継は、天皇に信長の動きを伝える
ために、禁中御庭者(きんちゅうおにわもの)という諜報機関を創設する。
頭領に新陰流の祖、上泉 信綱。 そして、実動部隊として、信綱の弟子、丸目 蔵人以下五名の若者が選抜される。
五名は、蔵人の他に、陰陽師の息子、修験者、忍者の姫、堺の商人という個性豊かな顔ぶれだった。
御庭者たちは、山科 言継の命を受け、伊勢や越前など、信長のしかける戦場に向かい、信長の動きを探る、、、。
⇒ 著者のデビュー作にして、名作「真剣」に続く二作目。 前作が秀逸な作品だっただけに、期待大で読み始めたの
ですが、、、、、、。 上泉 信綱が主人公だった前作とは、趣が違い、冒険青春小説のカラーが強めでした。
若い読者にはおススメですが、本格時代小説好きの方にはどうでしょう、、、、、、。
「本の雑誌」2008年度 文庫 時代小説部門:第5位。 オススメ度:7.5
暁の密使 (北森 鴻著、小学館文庫)
作品の紹介
1898年(明治31年)、一人の僧、能海 寛(のうみ ゆたか)がチベットをめざして旅立った。
能海の旅の目的は、東本願寺 法主(ほっす)の親書を携え、チベットのラッサでダライ・ラマ13世に謁見する
ことだった。 中国に上陸し、長江沿いに旅する能海にさまざまな困難が降りかかる。 日清戦争から日が浅く、
ロシアの脅威が増す中、日本だけではなく、欧米列強が対ロシアへの戦略拠点としてチベットを重要視する時代
背景が、能海を一介の僧と見なさなかったのである。 能海自身は、純粋な使命感に燃えていたが、日本政府は
彼が気づかない手段で、能海を密使にしたてていた、、、、、、。
⇒ という、歴史小説にして、冒険小説、さらにミステリー小説の要素も併せ持った作品です。
作品としてのクオリティーは高いと思うのですが、なじみにくいテーマであるのも事実。 読んでいて、場面が
あまりイメージできないのがつらかったかも。
「本の雑誌」2008年度 文庫 国内ミステリー部門:第3位。 でも、オススメ度:7
償い (矢口 敦子著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
日高 英介、36歳、元脳外科医。 しかし、今は、埼玉の郊外でホームレス生活を送っている。
一年近く前。 日高は仕事に没頭していた。 幼い息子が高熱を出すが、手遅れで死なせてしまう。
追い討ちをかけるように、妻が自殺。 さらに、医療ミスではないものの、自分のせいで患者を難病の
まま死なせてしまったという自責の念にもかられ、路上生活を送ることになった。
そんな日高にも、ひとつだけ胸を張れる過去があった。 12年前、小さな男の子を変質者から救った
ことだ。 日高は引き寄せられるように、男の子を救った町に流れ着き、ホームレスとなった。
⇒ 数ヶ月後、日高は、偶然、火事の第一発見者になる。 しかし、火事を起こした家では殺人が
起きていた。 ホームレスであるがゆえに、日高は疑われるが、一家無理心中であることが判明する。
⇒ ほどなく、日高は、自分が命を救った男の子、真人に出会う。 15歳になった真人は、聡明だが
どこか怜悧な少年に成長していた。 真人は、人の心の泣き声が聞こえる特殊な能力を持っている
ことを日高に告白する。
⇒ 日高が真人と再会する前から、町では殺人事件が続けて起こっていた。 一見、無関係に見える
それぞれの事件だが、日高はひとつの共通点を発見する。 被害者はすべて、真人が心の泣き声を
聞いた人物だった、、、、、、。
⇒ その後、日高は、警察のベテラン刑事や署長と協力しながら、複数の殺人事件の謎を追っていく。
やがて、真人が真犯人ではないと疑い始める、、、、、、。
⇒ ラストで「どんでん返し」を期待しながら、読み進めたのですが、、、それほどでもなく。
物語全体を覆うトーンも影があり、好みのわかれる作品かもしれません。 オススメ度:7
証し(あかし) (矢口 敦子著、幻冬舎文庫)
作品の紹介
朝倉 木綿子(ゆうこ)は18歳で渡米し、苦労の末、30歳で結婚。 しかし、木綿子が36歳の時、
夫は70歳で死亡した。 夫の財産を処分し、日本に帰国してからは、悠々自適の生活を送っていたが、
癌が見つかる。 早期発見だったため、命に別条はなかったが、子どもの産めないからだになってしまう。
夫の存命中は子どもを欲しいとは思わなかったが、今さらながら、子どもが欲しいと思いだす。
彼女には、若い頃、生活のために卵子を売った過去があった、、、、、、。
⇒ 木綿子は自分が卵子を提供して生まれた子どもの消息を調べる。 しかし、消息がわかった時、
その子は近所に住む一家4人を惨殺し、自殺していた、、、、、、。
しかし、木綿子は落ち込まなかった。 16歳に成長していた、その少年、恵哉(けいや)の無実を信じ、
探偵を雇い、自らも事件を調べ始める、、、、、、。
⇒ この後、木綿子は恵哉の昔の同級生たちに接触し、事件の真相に近づいたかに見えましたが、、、
それは、あくまでも彼女の視点に過ぎず、読者からは、そうは見えませんでした、、、、、、。
アメリカ帰りの高飛車な女性の素人捜査が空振りで終わり。もしくは、まぐれ当たりなんていうオチかと
思いながら読み進めたのですが、、、終盤での彼女の行動は全く理解不能でした。 それでは、殺人現場に
残された「VS」というメモの謎解きに期待しようと思ったのだけど、VSの意味も、目ウロコではなく。
木綿子か恵哉に感情移入できてたらもう少しおもしろいと思えたんでしょうが、、。 オススメ度:6.8
水滸伝 5 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
12世紀の中国 北宋の時代を描いた名作「水滸伝」の北方 謙三版。 全19巻の大作。
⇒【第5巻のあらすじ】 国の諜報機関、青蓮寺(せいれんじ)の手先である江州の副知事が、梁山泊の首領、
宋江の潜伏先を取り囲んだ。 しかし、宋江は、間一髪のところで脱出し、長江の砦に立て籠もる。
官軍二万の兵が押し寄せるが、旅の途中で知り合った、穆弘(ぼくこう)、李俊(りしゅん)の働きで、持ちこたえる。
やがて、梁山泊から駆け付けた林沖(りんちゅう)の騎馬隊に助けられた宋江は、再び旅に出る。
一方、梁山泊のスカウト担当の魯智深(ろちしん)は、北の国、遼(りょう)で女真族に捕えられる。 魯智深を救出
すべく、?飛(とうひ)が、単身、遼に向かう。
青蓮寺(せいれんじ)の李富(りふ)は、愛人にした梁山泊の諜報担当、馬桂の手引きで、二竜山の首領、楊志(ようし)
の暗殺を遂行する。 楊志暗殺と同時に、二竜山、桃花山の山塞に三万五千の大軍で総攻撃をかけるが、石秀、
周通の捨て身の活躍で、大軍をはね返す。
⇒ というわけで、、、第5巻にして、早くも戦死者が出てしまう展開です。 やはり、これまでの水滸伝とは違う物語と
して読まないといけないですね。 あと、楊志の残された息子、楊令(ようれい)がこれからどう成長していくのかが
楽しみです。 「水滸伝」全19巻は、2006年度「司馬遼太郎賞」受賞。 オススメ度:8.5
「水滸伝」1〜4のレビューは、読書感想文2009 part2 をご参照ください。
「北方謙三 水滸伝公式サイト」は
コチラ。
水滸伝 6 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
宋江(そうこう)は、武松(ぶしょう)、李逵(りき)とともに、諸国を巡る旅を続けていた。
途中、欧鵬(おうほう)、陶宗旺(とうそうおう)を供に加える。
その後、子午山(しごさん)の梁山泊の教育担当、王進を訪ね、預けていた史進を、少華山(しょうかざん)の
山塞に首領として戻す。
梁山泊は、北の守りを固めるために、双頭山(そうとうざん)に新たな山塞を建設。 朱仝(しゅどう)、雷横
(らいおう)を将校として派遣する。
?飛(とうひ)に救出された魯智深(ろちしん)は、片腕を失くしたが、情熱は以前のままだった。
名を、僧籍に入る前の魯達(ろたつ)に戻す。 梁山泊の同志で、秦明の副官でもある花栄(かえい)の手引きで、
地方軍の雄、秦明(しんめい)将軍と一晩語り合う。 秦明は、花栄とともに、梁山泊入りし、二竜山を率いることになる。
秦明は、二竜山と近くの山塞、桃花山(とうかざん)、清風山(せいふうざん)の連携を強化し、官軍を撃破。
かつての部下、黄信(こうしん)も、梁山泊の仲間に加わる。
一方、青蓮寺(せいれんじ)に聞煥章(ぶんかんしょう)が加わる。 聞煥章は、李富(りふ)でさえ、その才覚を認める
逸材だった。 ほどなく青蓮寺は、宋江の所在を捕捉し、再び包囲網を築き上げる。 宋江は、武松たちと山奥に立て
籠もるが、、、、、、。
⇒ やっと全19巻の3分の1まで読み進めました。 まだまだ先は長いですね。
「水滸伝」にはまりついでに、「替天行道(たいてんぎょうどう)」というタイトルの北方水滸伝読本まで買ってしまい
ました。 古本ですけど。 オススメ度:8
「北方謙三 水滸伝公式サイト」は
コチラ。
水滸伝 7 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
宋江(そうこう)は、武松(ぶしょう)、李逵(りき)、欧鵬(おうほう)、陶宗旺(とうそうおう)とともに官軍の
大軍に包囲されていた。 しかし、陶宗旺の石積みの仕掛けにより、官軍に一千人の被害を与える。
ほどなく、双頭山(そうとうざん)から朱仝(しゅどう)、雷横(らいおう)の軍が、梁山泊から林沖(りんちゅう)
の騎馬隊が駆けつけ、宋江は双頭山に脱出を図るが、途中、雷横が戦死してしまう。
少華山(しょうかざん)の史進(ししん)は、了義山(りょうぎさん)に籠った官軍の偽梁山泊軍への攻撃を開始。
梁山泊の軍師、阮小五(げんしょうご)とともに、梁山泊に向かう。 しかし、阮小五が戦死する。
魯達(ろたつ)は、雄州軍の司令官、関勝(かんしょう)との接触に成功。 自らの志を伝える。
一方、青蓮寺(せいれんじ)は、梁山泊近郊の祝家荘(しゅくかそう)はじめ三つの村に一万五千の官軍を送りこむ。
兵士たちを村人に偽装し、梁山泊との決戦の準備を着々と進めていた、、、、、、。
⇒ という感じの、動きのある巻でした。 聞煥章を得て、ますます強力になる青蓮寺と官軍に対し、梁山泊も次々と
手を打つのですが、またしても、三人の命を失ってしまいます。 熱いけど、痛い展開です。 オススメ度:8.5
「北方謙三 水滸伝公式サイト」は
コチラ。
水滸伝 8 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
祝家荘(しゅくかそう)近くの山中で猟師を営む解珍、解宝親子は、宋江(そうこう)の書、「替天行道
(たいてんぎょうどう)」に感銘を受け、梁山泊に加わる時をうかがっていた。
ほどなく、魯達(ろたつ)が解珍、解宝のもとを訪れ、梁山泊への協力をとりつける。
登州(とうしゅう)では、二竜山(にりゅうざん)の副官、花栄(かえい)が軍の将校、孫立(そんりつ)と接触。
孫立は、軍を抜け、梁山泊の新たな戦いの場、祝家荘に向かう。
一方、青蓮寺(せいれんじ)の李富(りふ)の愛人、馬桂(ばけい)は、聞煥章(ぶんかんしょう)の陰謀で
惨殺される。 馬桂殺害を梁山泊の報復だと誤解した李富は、これまでにも増して梁山泊殲滅に心血を注ぐ。
祝家荘での開戦に先立ち、官軍は二竜山を攻撃するが、秦明以下、一丸となって戦った梁山泊軍は、完勝。
しかし、高熱を出した楊令(ようれい)のために薬草を採ろうとして、歩兵隊長の鄭天寿(ていてんじゅ)が
崖下に転落して命を失う。
いよいよ祝家荘の戦いが幕を開ける。 梁山泊軍は、緒戦で官軍の宿元景(しゅくげんけい)の五千の騎馬隊に
完勝するが、その後は、祝家荘の罠に苦戦し、童威(どうい)、宋万(そうまん)、杜撰(とせん)という隊長たち
が相次いで戦死する。 林沖(りんちゅう)は、祝家荘の隣村、扈家荘(こかそう)軍を率いる長の娘、扈三娘
(こさんじょう)を捕虜とする。 その後、祝家荘のもうひとつの隣村、李家荘(りかそう)の長、李応(りおう)
が、武松(ぶしょう)、李逵(りき)と祝家荘を内部から攻め始め、梁山泊軍はようやく激戦に終止符を打つ。
しかし、抜け道から脱出を図った聞煥章を追おうとした歩兵隊長、焦挺(しょうてい)が罠の犠牲になってしまう。
一方、最後の攻勢を目前に控えて、林沖は前線から一人、姿を消す。 青蓮寺の陰謀で自殺したはずの妻、
張藍(ちょうらん)が生きているとの情報を得たからだった、、、、、、。
⇒ という感じで、梁山泊軍は、実質的には官軍との初めての総力戦を制します。 しかし、好漢たちが次々に
命を落とす展開は、しかたがないとわかっていても、やはりつらいものがありますね。 オススメ度:8.5
「北方謙三 水滸伝公式サイト」は
コチラ。
水滸伝 9 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
索超(さくちょう)と呂方(りょほう)は、妻の張藍(ちょうらん)を救出にやって来た林沖と知り合う。
やがて、魯達(ろたつ)と白勝(はくしょう)も姿を見せ、青蓮寺(せいれんじ)の罠にはまり、瀕死の林沖を
救出。 戦いの後、呂方は梁山泊に加わり、索超は一年後に入山することを約束して旅に出る。
梁山泊は、本営の南西に新たな山塞、流花寨(りゅうかさい)を建設。 指揮官は花栄(かえい)、軍師が朱武
(しゅぶ)、副官が孔明(こうめい)と決まる。
祝家荘戦後、入山した解珍(かいちん)は、二竜山に秦明(しんめい)の副官として着任。
楊令(ようれい)は、魯達に伴われ、子午山(しごさん)に向かい、王進(おうしん)に預けられる。
三万の官軍が流花寨の前に現れた。 晁蓋(ちょうがい)自らが軍を率いて向うが、官軍は動きを見せない。
これを罠だと見抜いた晁蓋は、北に向かう。 博州では、案の定、梁山泊の命綱である「闇塩の道」の中心
人物、廬俊義(ろしゅんぎ) と 柴進(さいしん)が追いつめられていた。 晁蓋は、史進とともに廬俊義を救出。
高唐の街で官軍に捕えられた柴進(さいしん)は、?飛(とうひ)、楊林(ようりん)に助けられるが、?飛は、
命を落とす。 扈三娘(こさんじょう)は、梁山泊への入山を申し出、晁蓋に認められる。
⇒ ますます厳しくなる青蓮寺、官軍との戦いの中、この巻は、梁山泊を裏で支える廬俊義と柴進の危機を描いて
います。 表の戦いだけではなく、裏の戦いも本格化し、総力戦の様相を呈してきた感がありました。
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水滸伝 10 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
代州を旅していた武松(ぶしょう)と李逵(りき)は、魯達(ろたつ)の命を受け、韓滔(かんとう) 、彭き(ほうき)
という民兵の長と親交を深める。 韓滔も彭きも、梁山泊が同志にと目をつけている呼延灼(こえんしゃく)将軍
の友人であり側近だった。
ところが、禁軍元帥、童貫(どうかん)の命により、呼延灼は、将軍の高きゅうとともに梁山泊征伐に臨む。
韓滔と彭きも、それぞれ二百の私兵を率いて、呼延灼と行動を共にする。 梁山泊近くで始まった戦いは、呼延灼が
勝利し、梁山泊の首領、晁蓋(ちょうがい)も九死に一生を得る。 呼延灼が帝の使者に勝利の報告のため陣を留守に
した間隙をつき、高きゅうが二度目の戦いに挑むが梁山泊軍が大勝。 戦いの後、呼延灼は、韓滔、彭きとともに、
梁山泊に加わる。
⇒ 物語は、全19巻の折り返し地点まで来ました。 でも、まだ先は長い、、、。 オススメ度:8
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水滸伝 11 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
樊瑞(はんずい)は、梁山泊の特殊工作部隊、致死軍(ちしぐん)の総隊長、公孫勝(こうそんしょう)に
適性を見出され、一隊をまかされる。 歩兵隊長の李俊は、水軍の総隊長となり、軍のさらなる強化を図る。
祝家荘(しゅくかそう)戦で功のあった李家荘の名主、李応は、副官の解宝(かいほう)とともに、重装備の
部隊を率いることになる。 一方、李応の執事だった杜興(とこう)は、史進(ししん)の副官を命じられる。
晁蓋は、双頭山近郊の町、平原を梁山泊の勢力下に置くため、官軍と戦う。
王英は、憧れている扈三娘(こさんじょう)の危機を救うべく、捨て身で敵の真っ只中に突入し、命を救った。
平原戦では、李応の重装備隊が機能し、難なく町を制圧下に置く。 平原で梁山泊軍に呼応した民の中に
史文恭(しぶんきょう)という老人がいた。 晁蓋は、従者に加えるが、史文恭は、青蓮寺の刺客だった、、、。
梁山泊への帰還を控えた晁蓋を、史文恭の毒矢が襲う、、、、、、。
⇒ この巻は、誰も戦死することもなく、このまま終わるのかな?と思っていたら、、、最後の最後で、梁山泊の
首領、晁蓋が死んでしまいました。 梁山泊、ピンチ。 さっそく、12巻に進まなければ。
オススメ度:8.2
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水滸伝 12 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
索超(さくちょう)は、田虎(でんこ)率いる威勝(いしょう)の叛徒の寨(さい)に留まっていた。 実質的に
軍を指揮する、青蓮寺(せいれんじ)の手先、唐昇(とうしょう)から軍に誘われるが断り、梁山泊に向かう。
索超は、林沖の騎馬軍に加わり、青騎兵の創設をまかされる。
晁蓋の死後まもなく、二万の禁軍が流花寨(りゅうかさい)を攻める。 しかし、呼延灼(こえんしゃく)、林沖、
史進らの活躍で難なく潰走させる。
魯達(ろたつ)は、無実の罪で牢に入れられていた東平府の将校、董平(とうへい)を脱獄させ梁山泊に迎える
青蓮寺は、梁山泊の闇塩の元締めが北京大名府にいることをつきとめ、18人の商人を拘束し、拷問にかける。
そして、盧俊義(ろしゅんぎ)が闇塩の元締めであることを確信し、拷問を続けるが、口を割らせることができず
にいた。 盧俊義捕縛の従者の燕青(えんせい)は、特殊工作部隊、飛竜軍の王英の支援を受け、救出作戦を
開始。 林沖と史進の隊も町を攻撃し、燕青は、盧俊義救出に成功する。
梁山泊は、北京大名府に残る闇塩の証拠を回収すべく、大軍を派遣し、町を制圧するが、その間隙をついて、
青蓮寺は、関勝に出撃を命じる。 関勝は、呼延灼(こえんしゃく)の裏をかき、梁山泊に突如、姿を現わす。
わずかな兵で留守を守っていた董平を蹴散らすが、攻め込むことなく、引き上げる。
呼延灼は、全軍を撤収し、梁山泊に向うが、帰路、一瞬の隙をついて、禁軍の将軍、趙安(ちょうあん)が、宋江
(そうこう)の隊を急襲。 宋江は、無事に逃げ伸びたが、韓滔(かんとう)が宋江をかばって戦死する。
雄州では、関勝が副官、かく思文(かくしぶん)、将校の魏定国(ぎていこく) 、単廷珪(たんていけい)、軍師の
宣賛(せんさん)とともに梁山泊に旅立つ、、、、、、。
⇒ 盧俊義捕縛という大事件だけでなく、動きの多い巻でした。 関勝のキャラクターが立っていて、盧俊義の陰に
対し、陽の役割を担い、巻のバランスをとっていたのかも。 オススメ度:8.2
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水滸伝 13 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
梁山泊では、李俊(りしゅん) 率いる水軍が流花寨(りゅうかさい)で官軍を迎え撃つ。 造船部隊の阮小二(げんしょうじ)、
潜水部隊の張順(ちょうじゅん)、水軍隊長の 童猛(どうもう) 、阮小七(げんしょうしち)の活躍で、水軍同士の初めての
戦いは、梁山泊軍の大勝に終わる。
関勝(かんしょう)が加わった梁山泊本隊は、呼延灼(こえんしゃく)、関勝、董平(とうへい)、穆弘(ぼくこう)の四人が
各三千の兵力を率いる編成となる。
官軍が新たな動きを見せる。 青州(せいしゅう)軍が二竜山に進撃。 禁軍の趙安(ちょうあん)は三万の大軍を率いて
流花寨に進軍する。 後詰めに宿元景(しゅくげんけい)の三万が控えるという念の入れようだった。
梁山泊からは、呼延灼、関勝、穆弘が出撃し、趙安の軍とぶつかる。 戦いは梁山泊軍優勢で始まったが、緒戦の後は
後は膠着状態が続く。 その間隙を縫って、官軍の董万(とうまん)の大軍が双頭山(そうとうざん)を急襲。
ふたつの寨(さい)に兵は逃げ込むが、片方の山に、総隊長の朱仝(しゅどう)の兵が三百、もう片方の山に副官の李忠、
隊長の孫立(そんりつ)、鮑旭(ほうきょく)が率いる兵が千という有り様だった。 しかし、朱仝も、李忠も、果敢に戦いを
挑む。 やがて、秦明(しんめい)、林沖(りんちゅう)、史進(ししん)が救援に駆けつけ、董万は退却するが、その直後、
朱仝は息を引き取る、、、。
流花寨では梁山泊軍が退却を始める。 殿(しんがり)軍として、呼延灼、項充(こうじゅう)、彭き(ほうき)の騎馬隊が
趙安軍の追撃を食い止める。 彭きは、百騎を率いて、趙安のもとに突っ込み、味方の軍の退却を助ける。
水軍の孔明は、わずか百の兵で官軍の造船所襲撃に成功するが、退却の際、戦死する、、、。
⇒ 官軍も梁山泊を相手に本腰を入れ始め、楽に勝てる戦はなくなってきました。
これから終盤まで、つらい戦いが続くのでしょうか、、、。 オススメ度:8.5
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水滸伝 14 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
梁山泊通信網のNo.2、張横(ちょうおう) は、息子の張平を子午山の王進(おうしん)に預ける。
青蓮寺の企てである威勝(いしょう)での偽装の叛乱は、五千の兵を集めていた。 梁山泊は、これに対抗すべく、
近くの石梯山(せきていざん)に寨(さい)を築き、魯達(ろたつ)、武松(ぶしょう)、李逵(りき) の三人に守らせる。
さらに、鄒淵が二百の兵を率いて入山し、官軍との戦いを開始するが、遼州の傭兵隊長、張清(ちょうせい)が
青蓮寺に雇われ、五百の兵とともに、石梯山のすぐそばに布陣する。
致死(ちし)軍隊長、樊瑞(はんずい)は、青蓮寺の首領、袁明(えんめい)暗殺を企てるが、従者の洪清(こうせい)に
返り討ちにされる。
大きな戦いのない一年が過ぎ、官軍が一気に攻勢に出る。 二竜山(にりゅうざん)、双頭山(そうとうざん)、流花寨
(りゅうかさい)に同時攻撃を仕掛ける。 梁山泊軍は、防戦を余儀なくされ、二竜山では、歩兵隊長の燕順(えんじゅん)が
董万(とうまん)軍に討たれる。 流花寨では、花栄(かえい)が、梁山泊本隊の呼延灼(こえんしゃく)、関勝、穆弘
(ぼくこう)とともに、官軍の宿元景(しゅくげんけい)、趙安(ちょうあん)の大軍と対峙していた、、、、、、。
⇒ 巻の前半はゆるやかな流れでしたが、後半は官軍の一斉攻撃が始まり、一気に緊迫した展開になってきました。
梁山泊、かなりやばい状況です。 逆転はあるのか??? オススメ度:8
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水滸伝 15 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
梁山泊軍は、各地で忍耐強く戦っていた。 流花寨では、魏定国(ぎていこく)が、わずか五十の兵で官軍の水軍の
兵糧を燃やすことに成功。 しかし、双頭山(そうとうざん)では、兵站担当の宋清(そうせい)と将校の楽和(がくわ)が
戦死。 流花寨でも、官軍の将軍、趙安(ちょうあん)をあと一歩のところまで追い詰めるが、穆弘 (ぼくこう)、欧鵬
(おうほう) が戦死する。
梁山泊の新軍師、宣賛(せんさん)は、奇策に出る。 梁山泊の女たち、怪我人の予備兵を総動員し、扈三娘(こさんじょう)
の騎馬隊、飛竜軍の王英、楊林(ようりん)、李応(りおう)の重装備隊とともに、北京大名府を奇襲し占拠に成功する。
この作戦で李応が戦死するが、北京大名府占拠は帝をあわてさせ、急転直下、官軍への撤収命令が各地を駆け巡る。
しかし、宿元景(しゅくげんけい)だけは、命令に従わず、自軍のみで流花寨への総攻撃をかける。 激戦の中、軍師の朱武
(しゅぶ)を失うが、宿元景を討ちとる。
梁山泊は壊滅の危機を免れたが、立て直しに時が必要だった。 宋江、盧俊義(ろしゅんぎ)、軍師の呉用(ごよう)は、
生き延びる道として講和の偽装を進めることを決意。 開封府(かいふうふ)で、間諜、侯健(こうけん) と戴宗(たいそう)に
帝に近い将軍、高きゅうへの工作を開始させる。
石梯山(せきていざん)では、魯達(ろたつ)、武松(ぶしょう)、李逵(りき)、鄒淵(すうえん)が、偽装叛乱軍の田虎
(でんこ)を討ち取り、遼州の傭兵隊長、張清(ちょうせい)を梁山泊に迎え入れる。
宋江は、扈三娘に王英との結婚を打診。 扈三娘は、この話を受け、二人の結婚生活が始まる。
⇒ 梁山泊は、絶体絶命の危機を乗り切りましたが、早くも次の戦いに向けての動きが始まります。
一方で、時間稼ぎのための偽装講和工作も始まり、、、、、、。 オススメ度:8
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水滸伝 16 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
張清(ちょうせい)は、穆弘 (ぼくこう)の後任として、本隊の総隊長に任じられる。 開封府(かいふうふ)では、戴宗
(たいそう)が高きゅうと会談。 偽装講和が本格的に動き出す。 これまで沈黙を守っていた禁軍元帥、童貫(どうかん)も
梁山泊との最終決戦を視野に入れ始める。
済州の町では、段亭(だんてい)という商人が、梁山泊の間諜、孫二娘(そんじじょう)に近づく。 しかし、段亭の正体は、
かつて晁蓋(ちょうがい)を暗殺した史文恭(しぶんきょう)だった。 史文恭の変装を見破れぬまま、兵站の要、柴進と
文官の中心、裴宣(はいせん)が暗殺される。 飛竜軍の劉唐(りゅうとう)が史文恭を殺すが、梁山泊の犠牲は大きかった。
致死軍の総隊長、公孫勝(こうそんしょう)は、青蓮寺を急襲し、宿敵、袁明(えんめい)の殺害に成功する。
燕青も、袁明の従者、洪清(こうせい)を倒す。 袁明の遺言により、青蓮寺の総帥となった李富(りふ)は、帝に拝謁し、
帝の耳目である遊妓、李師師(りしし)と出会う。
北の国、遼では、武松、李逵、蔡福 、蔡慶が女真族の長老の息子、阿骨打(あくだ)と手を結ぶ。
⇒ 大きな戦いはなかったけれども、最終決戦への序章とも言える、史進 vs 童貫の対峙もあり、緊張感のある巻
でした。 オススメ度:8
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水滸伝 17 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
禁軍の元帥、童貫(どうかん)が双頭山(そうとうざん)攻撃を開始。 総隊長、董平(とうへい) は、野戦を挑み、よく
戦うが、大隊長、孫立(そんりつ)が戦死。 続いて、董平も童貫に討たれる。
体制を立て直すため、梁山泊は、水面下で侯健(こうけん) と戴宗(たいそう)に命じていた偽装の講和策を進める。
そのために、盧俊義(ろしゅんぎ)を処断し、講和派が大勢を占めたという噂を流す。 宋側の責任者、高きゅうが、
この策に乗り、攻撃が止んでいる間に、双頭山の兵たちは、梁山泊に逃げ込む。
使命を終えた盧俊義は、梁山泊の兵たちを前に演説し、その生涯を終える。 童貫は、梁山泊に兵を進め、呼延灼
(こえんしゃく)、関勝(かんしょう)、張清(ちょうせい)、林沖(りんちゅう)、史進(ししん)らの主力が童貫軍に挑む。
結果は、童貫軍の一千に対し、梁山泊の犠牲は二千。 関勝、単廷珪(たんていけい)、鄒淵(すうえん)が戦死する。
負傷した童貫が梁山泊を去った後も、二竜山では、趙安の軍が布陣し、防御の仕掛けを丹念に剥がし始める。
公孫勝(こうそんしょう)は、致死軍、飛竜軍の総力をあげて、青蓮寺の高廉(こうれん)との最終決戦に臨む。
高廉を討ち取り、軍をほぼ壊滅状態に追い込むが、劉唐( りゅうとう )、楊林 (ようりん)を失う。
魯達(ろたつ)は、子午山(しごさん)の王進(おうしん)の庵で、最期の時を迎えていた。 楊令に梁山泊のすべてを
語り終え、病のため、無念のうちに一生を終える。
⇒ 関勝、魯達という大物が死んでしまいました。 しかし、童貫との最終決戦を控え、ますます犠牲者が増えそうな
予感です。 さあ、いよいよ、あと二巻。 オススメ度:8.2
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水滸伝 18 (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
童貫(どうかん)が動き出し、五万の大軍で梁山泊本隊と対峙する。 緒戦は、呼延灼(こえんしゃく)が
かつて梁山泊軍を撃破した「連環馬(れんかんば)」の策がはまり、童貫軍に一万もの戦死者をもたらす。
戦いは、水上でも始まる。 官軍は、超大型船の大軍で李俊(りしゅん)率いる梁山泊水軍を苦しめ、
激戦の中、阮小七(げんしょうしち)が戦死する。
子午山の楊令(ようれい)が山を下り、梁山泊に姿を現す。 宋江(そうこう)は、楊令を上級将校として遇する。
楊令は、二竜山を訪れ、秦明(しんめい)と再会するが、ほどなく、秦明は、官軍の趙安との最終決戦に臨む。
楊春(ようしゅん)率いる七千の兵を野戦に出し、秦明、解珍、かく思文(しぶん)は三千の兵とともに寨に籠る。
楊令は、かく瑾(かくきん)を従え騎馬隊を指揮し、双頭山から趙安の援軍としてやって来た周信を討ち果たす。
しかし、秦明はじめ二竜山に籠った兵は全員戦死する。
青蓮寺の指示で威勝(いしょう)の偽装叛乱を率いていた唐昇(とうしょう)は、公孫勝(こうそんしょう)から
梁山泊への誘いを受ける。 入山こそしなかったが、北京大名府から将軍の董万(とうまん)を引き離すことに
成功。 間隙を縫って、梁山泊軍が城郭(まち)を占拠する。 これにより、童貫も梁山泊から軍をひく。
楊令は、かく瑾とともに、遼に向かい、女真族の叛乱を指揮する阿骨打(あくだ)の軍に加わり、転戦する。
その後、いよいよ梁山泊に向かう。
童貫が八万の軍を率いて再び動き出す。 梁山泊も六万の軍で守りを固める。 林沖は、緒戦で童貫の副官を
討つが、扈三娘(こさんじょう)を助けるために討死。 呼延灼は、林沖の後任に楊令を指名する、、、。
⇒ 秦明、林沖まで姿を消すという痛い巻でした。 ああ、あと一巻。 オススメ度:8.5
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水滸伝 19(最終巻) (北方 謙三著、集英社文庫)
作品の紹介
呉用の命を受け、公孫勝(こうそんしょう)、燕?(えんせい)、李俊は、首都、開封府(かいふうふ)に奇襲を
仕掛ける。 攻撃には成功するが、致死軍の隊長、楊雄(ようゆう)を失う。
その直後、童貫(どうかん)軍と梁山泊軍との本格的な戦闘が始まる。 童貫軍は、梁山泊軍の本営に奇襲をかけ、
背後にも一万の軍を布陣する。 五丈河の上流からも水軍が進軍し、流花寨(りゅうかさい)まで戦線が拡がった
総力戦となる。 激戦の中、歩兵隊長、陳達(ちんたつ)、遊撃隊長、徐寧(じょねい)が戦死。 流花寨も趙安
(ちょうあん)軍の猛攻を受け、水軍隊長の張順、将校の魏定国(ぎていこく)、そして、総隊長の花栄(かえい)が
果て、陥落する。 童貫軍の攻撃は激しさを増し、呂方(りょほう)、黄信(こうしん)、楊春(ようしゅん)、
そして、李逵(りき)までが倒れていく。 ついに、官軍は梁山泊の中まで押し寄せる、、、、、、。
⇒ ラストは、書かないでおきます。 ここ数カ月読み耽った大作を、とうとう読了してしまいました。
「水滸伝」という物語は、いったん終止符を打ちますが、北方版は、楊令を主人公とする続編「楊令伝」へと続くのです。
本編のラストも、完結というよりも「続く」という感じでした。 ということで。 「楊令伝」が文庫になったら、また
この世界にどっぷりとつかろうと思います。 オススメ度:8.5
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北方水滸伝副読本「替天行道(たいてんぎょうどう)」は コチラ。
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